廃漁網から作った再生ナイロン、バージン素材比でCO2排出量を85%削減:サステナブル設計
リファインバースは「第2回サステナブル ファッション EXPO」(2022年4月6〜8日、東京ビッグサイト)において、使用済み漁網などを原料とする再生ナイロン素材「REAMIDE(リアミド)」を活用したアパレル製品などを展示している。
リファインバースは「第2回サステナブル ファッション EXPO」(2022年4月6〜8日、東京ビッグサイト)において、使用済み漁網などを原料とする再生ナイロン素材「REAMIDE(リアミド)」を活用したアパレル製品などを展示している。
リファインバースは廃漁網や自動車のエアバッグ端材などを収集し、前処理工程での独自技術活用などを通じて、REAMIDEを製造する素材メーカーだ。漁網にはナイロン6、エアバッグにはナイロン66がそれぞれ使用されているが、これらを他の物質から分離、洗浄した上でペレタイズして、再生素材の原料にする。
ナイロンREAMIDEの用途としては、アパレル製品や車載用部品、オフィス家具などが挙げられる。バージンナイロンを使用した場合と比較しても、高品質な製品づくりが可能だという。
リファインバースによると、現在日本国内では年間で約6000トンの漁網が生産され、廃棄されている。同社は国内各地の漁業者や漁網メーカーと連携して、ナイロン製の廃漁網を安定的に回収できる体制を構築している。回収量は年間で約300トンという。回収を通じて、海洋ごみの減少に寄与する。
REAMIDEの特徴の1つとして、ライフサイクルアセスメントの観点から見ると、バージンナイロン製造時と比較してCO2排出量を大きく抑えられる、という点が挙げられる。バージン素材のナイロン6と比較すると、廃漁網から生成されたREAMIDEはCO2排出量を約85%削減できる。また、バージン素材のナイロン66と比較すると、シリコンコーティングされたエアバッグから生成されたREAMIDEは約75%、ノンコーティングの場合は約80%排出量を削減できるという。
こうしたCO2排出量の削減を実現する上での技術的工夫点としては、マテリアルリサイクルの採用が挙げられる。リファインバースの担当者は「化学合成によって廃材を再生素材にするケミカルリサイクルはモノマー素材を得られる利点はあるが、化学的処理の過程で熱加工などを行うため、相応のCO2排出を伴う。廃材や端材を溶解してペレットにするマテリアルリサイクルであれば、そうした排出量は抑制できる」と語る。
ただ、マテリアルリサイクルの採用にも課題はある。例えば、「廃材には海中の天然物などに由来する物質が付着しており、そのままリサイクルを行うとコンタミネーションが発生し、細い繊維が作りづらくなる」(同担当者)。このため、同社は独自の手法によって、付着物質を洗い落とす技術を活用して、高品質な再生素材づくりを実現したという。
REAMIDEの価格感については「生産するロット数や、バージンナイロンの価格状況にもよるので一概には言えないが、顧客からコスト感で折り合いが付かずに採用を見送られるような値段ではない」(同担当者)という。
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