世界初、4インチ窒化アルミニウム単結晶基板の製造に成功:材料技術
旭化成は、米国ニューヨーク州にある子会社のCrystal ISが4インチ(直径100mm)の窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板の製造に世界で初めて成功したと発表した。
旭化成は2023年8月21日、米国ニューヨーク州にある子会社のCrystal ISが4インチ(直径100mm)の窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板(以下、AlN基板)の製造に世界で初めて(同社調べ)成功したと発表した。
Crystal ISはこれまでAlN基板を活用し、自社でUV-C(深紫外線)LEDを製造/販売してきたが、今後は次世代パワーデバイスなどへの展開を見据え、AlN基板の外部販売に向けた活動も強化していく
2023年度中に使用可能領域を99%以上に
Crystal ISのAlN基板は、欠陥密度が低く、紫外線透過性が高く、不純物濃度が低いという特徴がある。その特徴を生かして、これまで殺菌用途を中心としたUV-C(深紫外線) LEDでの活用を進めてきた。また、非常に広いバンドギャップエネルギーを持つAlNは、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも電力損失が小さく、耐圧が高いポテンシャルを有することから、エネルギー効率に優れ、次世代のパワーデバイスへの適用やRF(高周波)アプリケーションへの展開も期待されている。
AlN基板の製造には2000℃以上となる昇華炉の内部で精緻な温度コントロールが必要で、これが基板のスケールアップ(大口径化)で最も難しい課題だった。Crystal ISは1997年の創業以来、同分野のノウハウを蓄積し続けており、これまでも複数回のスケールアップを実現してきた。現在は年間数千枚の2インチ基板を製造しているが、4インチ基板の商業化が実現すれば、1枚あたり従来の4倍の面積で各種デバイスを製造できるようになり、生産能力/効率の大幅な向上に貢献する。
これはCrystal ISのAlN単結晶成長プロセスが、今後広がる需要に応えるスケーラビリティを持つことを示す。なお、このたび製造に成功した4インチ基板はその面積の80%以上が使用可能だが、2023年度中に使用可能領域を99%以上とすることを目指してさらなる改善を行っていく。
Crystal IS社は、1997年にAlN基板を開発するスタートアップとして設立され、現在は2インチ基板を用いて殺菌用途向けの「Klaran(クララン)」、分析用途向けの「Optan(オプタン)」といったUV-C LED製品を製造している。主力製品のKlaranは260n〜270nmの殺菌に理想的な波長を出力でき、殺菌用途を中心にさまざまな場所で利用されている。
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