ZOZOが次世代の織物を披露、音楽を流せる織物やテキスタイル型ディスプレイを展示:材料技術(3/3 ページ)
ZOZO NEXT、東京大学筧研究室、細尾の3社は、共同研究プロジェクトの作品展示イベント「Ambient Weaving Collection−環境と織物」(2023年8月1〜7日、三菱ビル内のHave a Nice TOKYO!)を開き、音楽を流せる織物「Sounds」やテキスタイル型ディスプレイ「Pixels」を披露した。
テキスタイル型のディスプレイ「Pixels」
Pillarsは、立体形状に変形可能な織物で、靭性があり長さが異なる2種類のカーボンバーが緯糸の一部に織り込まれている。カーボンバーの端部にはスナップボタンがあり、これにより、複数のカーボンバーを接続して立体形状の織物を作れる。なお、展示品のPillarsを製作する前に、シミュレーションソフトに各カーボンバーとその端部の位置や長さ、織物の形状などの設計データを入力し、ソフト上で複数のカーボンバーとその端部のさまざまな接続パターンとそのパターンで作成できる立体形状を検証し、カーボンバーの接続順を変えることで多様な立体形状が作れる設計データを導き出した。その設計データに基づき展示品のPillarsを製作した。会場では3つのPillarsを用いて、蕾から半開き、全開きまでの花の開花のプロセスを表現した。
Iridescenceは、特殊な箔素材の重ね合わせにより、表面とその影が異なる模様を示す織物だ。この織物は緯糸として用いるフィルムの表面に微細構造を制御したインクによる印刷パターンが施されているため特定の波長を反射し、金属の光沢のような質感を表現する。複数のこのフィルムを特定の順序で重ねて織り込むことで、織物の透過光とフィルム裏面からの反射光が重畳し、色の変化だけでなく印刷パターンの周期的なずれによるモアレパターンが現れる。「Iridescenceは富士フイルムが開発した構造色インクジェット技術を採用したフィルムを裁断して織り込んだ織物だ。表面とその影が異なる模様を示すため、インテリア性が高いランプシェードなどで使えるだろう」(中丸氏)。
Pixelsはドットマトリクス状に発光する織物だ。この織物の背面に設置された箔に電気を流すと、緯糸に織り込まれた有機ELダイオード(OLED)が自動発光する。OLED箔と経糸の導電糸が交差することでマトリクス状の回路を構成している。背面に設置されたOLED箔は非発光時にも西陣織の意匠を損なわない。会場では、桜、虫、雨のそれぞれをモチーフにした3枚のPixelsを展示した。
中丸氏は「Pixelsでアニメーションも表現できる。一例を挙げると、Pixelsの上部に雨雲、中部に雨、下部に水たまりの模様を構築すれば、雨の日のアニメーションを作れる。そのため、Pixelsはテキスタイル型のディスプレイだと考えている。また、モバイルバッテリーなど携帯型の電源でも稼働するため、このアニメーションを投影するコスチュームも作れる」とコメントした。
Ambient Weavingの歴史
ZOZO NEXT、東京大学筧研究室、細尾の3社は2020年4月に、機能性と美を両立するテキスタイルの共同開発プロジェクトを開始した。このプロジェクトでは、東京大学筧研究室のインタラクション技術およびアートデザインの知見と、ZOZO NEXTの先端素材やデバイス技術を、西陣織の独自技術を持つ細尾のテキスタイルに織り込むことで「周囲の環境情報と織物を媒介するさまざまな機能と表現の両立」を目指してきた。
2021年4月に初の作品展示展「Ambient Weaving−環境と織物」(2021年4月17日〜7月18日、HOSOO GALLERY)を開催し、2022年3月には米国のコンバージェンスカンファレンス&フェスティバル「SXSW(サウスバイサウスウエスト) 2023」で作品の海外初展示を行った。同年6月にはオーストリアで開催されたメディアアートのイベント「Ars Electoronica Festival 2022」でEU Commisionが主催する「STARTS Prize 2022」の栄誉賞をDrifting Colorsで受賞している。
Ambient Weaving Collection−環境と織物では、ZOZO NEXT、東京大学筧研究室、細尾の3社が進める共同研究プロジェクトのこれまでの活動内容も動画やパネルなどで紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 人工筋肉を活用したスマートテキスタイルの共同研究を開始
ZOZO NEXTと金沢大学は、空気圧で駆動する人工筋肉の流体アクチュエーターを活用した、変形するスマートテキスタイルの共同研究を開始した。ライブパフォーマンスにおける演出用衣装などへの応用を目指す。 - “似合う”を追求するZOZO、初のリアル店舗でスタイリングサービスを無料提供
ZOZOは、東京・表参道にオープンする同社初のリアル店舗において超パーソナルスタイリングサービス「niaulab by ZOZO(似合うラボ)」を提供すると発表した。似合うラボでは、独自開発のAIによるファッションコーディネートとプロのスタイリストによるスタイリング提案を組み合わせたサービスを無料で提供する。 - PB事業への挑戦から生まれた「Made by ZOZO」が実現する一品一葉の受注生産
ZOZOの生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」は、最低1着の注文から生産を行い、商品を受注してから最短10日で発送できることを特徴としている。その開発の背景には、「ZOZOSUIT」やPB(プライベートブランド)事業への挑戦があった。システム開発を担当したZOZOの松藤恒氏に話を聞いた。 - 高精度な3D計測が可能な新ボディースーツ「ZOZOSUIT 2」を発表
ZOZOは、より精緻な3D計測が可能になった、新ボディースーツ「ZOZOSUIT 2」を発表した。また、ZOZOSUIT 2と足を高精度に3D計測する「ZOZOMAT」の技術を活用した新サービスを創出するため、パートナー企業の募集を開始した。 - スマート工場が5G待望のキラーアプリに、期待集めるネットワークスライシング
脚光を浴びるIoTだが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第5回は、5Gとスマートファクトリーの関係性にスポットを当てる。 - 肌色を正確に、ネットでのコスメ選びにイノベーションを起こす「ZOZOGLASS」
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOは、新たに化粧品などを取り扱うコスメ専門モール「ZOZOCOSME」をZOZOTOWN内に開設したことを発表した。併せて、事前予約受付を開始していた肌色計測用メガネ「ZOZOGLASS」を用いたサービスも開始する。