ZOZOが次世代の織物を披露、音楽を流せる織物やテキスタイル型ディスプレイを展示:材料技術(2/3 ページ)
ZOZO NEXT、東京大学筧研究室、細尾の3社は、共同研究プロジェクトの作品展示イベント「Ambient Weaving Collection−環境と織物」(2023年8月1〜7日、三菱ビル内のHave a Nice TOKYO!)を開き、音楽を流せる織物「Sounds」やテキスタイル型ディスプレイ「Pixels」を披露した。
スピーカーとして機能する「Sounds」
Woven Prototypesから厳選した作品としては、「Sounds」「Optical Unveil」「Layers」「Pillars」「Iridescence」「Pixels」を披露した。
Soundsは、圧電性を備えた高分子フィルムである有機圧電膜の両面に電極を設けた素材を裁断したものを、西陣織帯地の特徴的な技法で織物の織柄に立体感を演出する技法「引箔(ひきばく)」で緯糸に500本織り込んだ織物で、この500本の緯糸がスピーカーとして機能する。具体的には、500本の緯糸のみが外部のオーディオ機器から送られた電気信号により振動するため、電気信号を流す範囲を変えることで、特定部位のみに音を発生させたり、形状に応じて音の広がりを変えたりできる。
500本の緯糸はそれらの位置に合わせて12のエリアで分けられており、それぞれのエリアで単独で音を出したり、複数のエリアや全てのエリアで同時に同じ音楽を流したりできる。さらに、織物は外の音を透過するため、環境音に織物からの音を重畳するなど、従来とは異なる音の演出を実現する。なお、外部のオーディオ機器の信号を送る配線はWoven Prototypesに設けたフレームに仕込んでいる。
中丸氏は「例えば、美術館の壁紙に人感センサーを設けたSoundsを設置すれば、対象のエリアに人が入ると壁紙からガイドの音声を流すようにできる。加えて、パーティションや屏風(びょうぶ)のような薄い素材にもSoundsは使えるので、外部の音に風鈴の音を重ねて聴かせる屏風や逆位相の音を出して隣のブースに会話が聞こえないようなパーテーションも作れると思う」と語った。
Optical Unveilは入射光と観察者の位置により見え方が変わる織物だ。この織物は、再帰性反射材のビーズと薄膜干渉層を備えた特殊な箔糸が織り込まれており、入射光の角度に応じた光路長に対応する干渉色を示す。加えて、西陣織の立体構造により、同じ箔糸でありながら多様な色を演出し、鑑賞者との相対的な位置関係により見え方が変化する。なお、Optical Unveilは量産織機を用いた大型化にも対応している。
Layersは、2枚の織物を重ね、光が透過すると発色する仕組みを持つインスタレーションで、偏光板とOPP(二軸延伸ポリプロピレン)テープで構成された箔が織り込まれ、光が織物を重ねた状態で透過すると複屈折による光の干渉で偏光色を表す。さらに、偏光板の向きとテープの厚みを変えることで複数の色を表現し、箔の位置をアレンジすることでさまざまな色のパターンも生成可能。鑑賞位置によってその見た目は動的に変化する。
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