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ZOZOが次世代の織物を披露、音楽を流せる織物やテキスタイル型ディスプレイを展示材料技術(1/3 ページ)

ZOZO NEXT、東京大学筧研究室、細尾の3社は、共同研究プロジェクトの作品展示イベント「Ambient Weaving Collection−環境と織物」(2023年8月1〜7日、三菱ビル内のHave a Nice TOKYO!)を開き、音楽を流せる織物「Sounds」やテキスタイル型ディスプレイ「Pixels」を披露した。

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 ZOZO NEXT、東京大学筧研究室、細尾の3社は、共同研究プロジェクトの作品展示イベント「Ambient Weaving Collection−環境と織物」(2023年8月1〜7日、三菱ビル内のHave a Nice TOKYO!)を開いた。

 会場では、「環境情報を表現する織物」「環境そのものが織り込まれた織物」を意味する“Ambient Weaving”のコンセプトを表現した作品に加え、現在開発中の機能を統合した西陣織や意匠と表現を探求中のプロトタイプ作品群「Woven Prototypes」から厳選した作品を披露した。披露された作品はいずれも西陣織の織物となっている。


「Ambient Weaving Collection−環境と織物」の会場[クリックで拡大]

温度の変化を視覚的に伝えられる織物

 Ambient Weavingのコンセプトを表現した作品としては「Wave of Warmth」と「Drifting Colors」を展示した。

 Wave of Warmthは周辺環境の温度に応じて色が変化する織物だ。この織物では、周辺環境が特定の温度に達すると呈色するロイコ色素を含んだインクを和紙の両面に塗工し、裁断した箔紙を緯糸(織物で横方向に通す糸)に織り込んでいる。これにより、周辺環境が25℃以上になると緯糸が黒から青に呈色し、温度が24℃以下になると黒に戻る。この可逆的かつリアルタイムの変化を通して、温度の変化を視覚的に伝えられる。

 ZOZO NEXT MATRIX テクニカルディレクターの中丸啓氏は「Wave of Warmthでは波の模様を経糸(織物を織る際に縦になる糸)と緯糸の織り込みでデザインしている。さらに、裏に薄いヒーターを仕込むことで、意図的に周辺環境の温度を変化させ、緯糸がゆっくり青くなって、黒に戻るようにしている。この動作を数十分間隔で繰り返すことで波のアニメーションを表現している。今回はあくまでアート作品としての展示だが、Ambient Weavingはテキスタイルなので、壁紙やカーテンなどさまざまな用途で使えると思う。加えて、使用しているロイコ色素を含んだインクにより30℃以上で呈色する技術や2段階で呈色する技術も持っているため、さまざまな表現に対応できる」と話す。


周辺環境の温度に応じて色が変化する「Wave of Warmth」[クリックで拡大]

 Drifting Colorsは、熱収縮チューブでコーティングされた複数の綿糸を織り込んだ織物だ。これらの糸の先端が作品裏の複数の染料に浸っており、毛細管現象により、糸の先端を介して複数の染料が全体に含侵する。このため、もともと白と黒で模様がデザインされているが、その模様にさまざまな色が付く。

 加えて、ロシアの植物学者であるミハエル・ツヴェット氏が発明した物質を分離する技法「クロマトグラフィー」を応用している。具体的には、使用する各染料の電荷、質量、疎水性の差により各染料が毛細管現象で異なるスピードで内部の綿糸を移動する。例えば、さまざまな色素で構成された特定の染料が、毛細管現象で内部の綿糸を移動する際に、電荷、質量、疎水性の差で青と赤の染料に分離し、その2色の染料が異なるスピードで綿糸を染色する。

 さらに、展示会場の湿度や織物の水分量を適切に保つことで、この移動が継続するため、染料が糸へと浸透した後も動的に色が変化し続ける。なお、会場では、3つのDrifting Colorsを展示し、そのうち1つは、織物の糸と作品の裏に設けた染料をつなげ会期中に色の変化を楽しめるようにした。「この織物は先端の糸に真水を浸すと色を落とせるため色の付け直しが行える他、先端の糸から染料を離して乾燥させると色が固着する」(中丸氏)。


会期中に色の変化を楽しめるようにした「Drifting Colors」[クリックで拡大]

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