ニデックのAGV事業を武蔵精密工業が買収、AI技術との相乗効果狙う:製造マネジメントニュース
武蔵精密工業は、ニデックドライブテクノロジーが手掛けるAGVの製造販売事業を買収したと発表した。買収金額は11億4800万円で、同年6月30日を効力発生日とする信託受益権売買により譲受したという。
武蔵精密工業は2023年8月7日、ニデックドライブテクノロジーが手掛けるAGV(無人搬送車)の製造販売事業を買収したと発表した。買収金額は11億4800万円で、同年6月30日を効力発生日とする信託受益権売買により譲受したという。
ニデックドライブテクノロジーは、ニデックグループで減速機やプレス機などを主力事業とする他、「S-CART」のブランド名でAGV事業を展開してきた。現在は、直径600mmと小型で80kgまでの搬送重量に対応する「S-CART-Mini」から、搬送重量1000kgに対応し高さ165mmの低床設計を特徴とする「S-CART-V1000 LFT」まで5機種をラインアップしている。また、ニデックグループで培ってきた原価低減力や制御開発、豊富な顧客基盤なども強みとする。
一方の武蔵精密工業は、インダストリー領域でAI(人工知能)事業を新規に展開している。特に、AIを活用した物流の自動化分野では、イスラエルのSIX AIとの協業に基づきAMR(自律走行搬送ロボット)を開発するだけでなく、現場にあるAGVやAMR、搬送物を管理するAIロボットプラットフォーム「MAESTRO(マエストロ)」の事業展開も進めている。
武蔵精密工業は今回の買収により、S-CARTブランドがこれまで信頼と実績を積み重ねてきたハードウェアとしてのAGVに、先端のAI技術やMAESTROを組み合わせることで物流向けの自動化ビジネスを拡大していきたい考えだ。同社によれば、2023年度の自律搬送ロボット市場は国内で約230億円であるのに対して、2027年度にはグローバル市場で約2.5兆円となる見通し。武蔵精密工業もこの拡大する市場に対して、国内にとどまらずグローバルで同社の物流向け自動化ビジネスを拡大していく方針である。
なお、ニデックグループは、2023年7月にTAKISAWAのTOB(株式公開買い付け)を発表するなど、足元のM&A施策では工作機械事業の拡大に注力している。企業買収のイメージが強いニデックだが、グループ全体の方針との整合性を考慮し、ニデックドライブテクノロジーのAGV事業については、武蔵精密工業に売却することで同事業の今後の成長を託した格好だ。
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