ギア部品の検品をAIで自動化、武蔵精密工業が自社内で試験運用へ:AI・人工知能EXPO
武蔵精密工業は、「第2回 AI・人工知能 EXPO」において、AI(人工知能)を用いた自動車部品の自動検品システムのデモを披露した。AIベンチャーのABEJAと共同開発しており、2018年度内に自社内での試験運用を行う予定。製造プラットフォームとしての外販も視野に入れている。
武蔵精密工業は、「第2回 AI・人工知能 EXPO」(2018年4月4〜6日、東京ビッグサイト)において、AI(人工知能)を用いた自動車部品の自動検品システムのデモを披露した。AIベンチャーのABEJAと共同開発しており、2018年度内に自社内での試験運用を行う予定で、製造プラットフォームとしての外販も視野に入れている。
デモで披露したのは、ディファレンシャルを構成するギア部品の1つであるベベルギアの側面を検査するシステムだ。鍛造によって製造されるベベルギアは、ディファレンシャルの異音や振動、破損が発生しないよう、ギアのかみ合い部に打痕やスケール残り、バリ、ショット玉付着などがないように目視検査を経て出荷されている。この目視検査は、熟練の作業員であれば1個当たり最短2秒で完了する工程だ。
しかし目視検査工程は、人の五感頼りであり、作業員の習熟度によって検査の精度や時間がばらつく上に、長時間の高負荷作業であることが課題になっていた。これをAIによって自動化するために開発したのが、デモで披露した自動検品システムだ。
製造したべベルギアを産業用ロボットでピックアップして回転させ、側面の全周をカメラで撮影。その画像データと、NVIDIAの組み込みAIボード「Jetson TX2」に実装したABEJA開発のAIアルゴリズムを用いて良品と不良品を見分ける。
ABEJAは、「AutoEncoder(自己符号化器)」をはじめとする複数のロジック手法を組み合わせて、良品データだけから不良品を判断、検品する方法を確立し、モデルの精度向上を進めた。AIのアルゴリズムを得るためのディープラーニングの学習には約8万6000枚の画像データを使用した。
また、自動検品システムとして仕立てる上では、武蔵精密工業が自社で生産ラインを自動化する際の機器制御や通信制御に関するノウハウなどを役立てている。
このAIアルゴリズムによる検査精度は、作業員による目視検査と同等レベルになったという。ただし、検査時間は5秒弱かかっており、熟練の作業員のレベルには届いていない。「今後も自社内で試験運用を進める中でAIアルゴリズムを向上して、精度も早さも熟練作業員と同等以上に進化させたい」(武蔵精密工業の説明員)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 品質不正問題にどう立ち向かうのか、抜本的解決のカギはIoTと検査自動化
2017年の製造業を取り巻く動きの中で、最もネガティブな影響を与えたのが「品質不正」の問題だろう。「日本のモノづくり」のブランド力を著しく傷つけたとされるが、2018年はこの問題にどう対応するのかという点は、全ての製造業の命題である。人手不足が加速する中、解決につながる「仕組み」や「ツール」に注目が集まる1年となる。 - 月額26万円で画像認識AIによる外観検査ができる、「製造業の関心極めて強い」
NTTコムウェアは、ディープラーニングを用いた画像認識AI「Deeptector」の新製品となる「産業用エッジAIパッケージ」を発表した。HPEのエッジコンピューティング向け製品「Edgeline EL1000 Converged IoT System」にNVIDIAの「Tesla P4」を2枚組み込み、Deeptectorをプリインストールしたパッケージ製品で、月額26万円からで利用できる。 - IoT時代にどう立ち向かうか、自動検査の位置付けを変えたマインドセット
「検査装置は不具合を見つける装置ではなく、不具合を出さないためのものだ」――。基板実装ラインなどで使われる外観検査装置で好調を続けるサキコーポーレーションだが、成功の土台には「マインドセット」の取り方にあったという。サキコーポレーション社長の秋山咲恵氏の講演の内容をお届けする。 - ライフサイクルコストで見る検査自動化の価値、全数検査時代にどう取り組むか
日本ナショナルインスツルメンツは自動テストの展望についてまとめた「Automated Test Outlook 2017(自動テストの展望 2017)」を発表。検査機器への投資をライフサイクルコストで捉える意味などを強調した。 - 生産ラインで品質検査を自動化、“光モノ”も読み取る携帯型3Dスキャナー
クレアフォームジャパンは、携帯型3次元測定器の新製品を発表。前モデルに対し速度12倍、精度で1.5倍を実現し、使いやすさを高めた。生産ラインに組み込む品質検査用として提案を進めていく方針だ。 - 品質・検査領域に広がるブルーオーシャン
ピンチはチャンスだと捉えたい。