ライフサイクルコストで見る検査自動化の価値、全数検査時代にどう取り組むか:検査自動化
日本ナショナルインスツルメンツは自動テストの展望についてまとめた「Automated Test Outlook 2017(自動テストの展望 2017)」を発表。検査機器への投資をライフサイクルコストで捉える意味などを強調した。
全数検査時代にどう取り組むか――。日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は2017年3月3日、自動テストの展望についてまとめた「Automated Test Outlook 2017(自動テストの展望 2017、ATO2017)」の内容を発表。検査機器を総所有コスト(TCO)で考える意義について紹介した。
テスト自動化に向けた5つのトレンド
「ATO」は米国NIがテスト装置や計測に関する市場動向や技術動向を調査し毎年発行しているものである。「ATO2017」では過去に取り上げた複数のトレンドを見直し、新たに今必要な5つのトレンドについて紹介した。5つのトレンドとは以下の通りである。
- テスト組織の最適化:テスト部門を単なるコストセンターから戦略的資産に転換する動き。そのためには、標準的なテストプラットフォーム開発や意思決定を改善するためのデータ用インフラの構築など組織的な取り組みが必要となる
- 再構成可能な計測器:テストに対する新たな要件に対応するために変更を施す場合がある他、校正や修理を行う際に置き換える可能性もある。こうしたニーズに対応する必要がある
- ソフトウェアを中心としたエコシステム:従来のハードウェア中心のテストシステムからソフトウェア中心のテストシステムとして切り替えることで、自動テストシステムの能力を向上可能。前後の工程の生産性や連携などのニーズにも応えられる
- 管理されたテストシステム:テストシステムの性能は継続的に高まっており、新たなデータ技術や通信技術を活用することで、テスト管理者がテストシステムを最適化するために貢献する
- ソフトウェア駆動型のテストが必須に:ソフトウェア駆動型テストが必須となりつつある。例えば、輸送機器製造分野では安全規格に準拠するためHIL(Hardware in the Loop)テストの導入が必須となってきている
この中で特に日本NIが重要だと強調したのが「テスト組織の最適化」である。日本NIのAPACマーケティングマネージャー(テスト&RF担当)である久保法晴氏は「多くの製造業において、テスト部門は、かつてのIT部門と同様のコストセンターだと位置付けられていることが多い。しかし現在、IT部門は単なるコストセンターではなくなり、企業競争力に貢献する部門となっている。テスト部門も最適な活用を行うことで、そうした位置付けに変えられる」と述べている。
テスト部門を戦略的資産に転換していく中で重要になるのが、テスト部門の設備投資などをTCOで判断することである。計測機器などを導入するという点だけを考えれば単なるコストであるが、新たな計測機器を導入することで、従来のテストにかかる費用や時間を削減できればそれが最終的な企業価値につながることがある。さらに、新たな計測機器を導入することで、例えば、抜き取り検査から全数検査に切り替えることができ、新たな顧客の獲得が可能になるようなことができれば、それは投資対効果の面でプラスの価値を生み出すという考えもできる。
「こうした最終的に生み出す価値と計測機器のライフサイクルコストを合わせて考えることが必要だ。これにより、従来は無駄だと思われていたテスト関係機器が新たな価値を持つことを理解できるかもしれない。逆に効率的だと思われていた低コスト機器の導入がそれほど効率的ではないという判断になるかもしれない」と久保氏は述べている。
TCOの考え方は設備投資においては当然の考え方にも見えるが「半導体分野ではテスト部門でもTCOでの費用対コストの考え方が浸透しているが、電子部品や半導体の中でもアナログ系ではあまりそうした考えに立っていないところも多い。特に少量多品種の生産を行う領域では、テスト部門はコストセンターだと考えられがちだ。しかし、PCおよびソフトウェアベースの計測機器など再構築可能な計測技術が生まれていることから、少量多品種でも効果を生み出すことが可能になりつつある。戦略的資産として有効活用できる点を訴求したい」と久保氏はTCOの意義を述べている。
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