炎天下の体感温度を10℃下げる素材、磁石と日傘のタイプを開発:材料技術
SPACECOOLは、「第9回 東京 猛暑対策展」で、放射冷却素材「SPACECOOL」の新タイプであるマグネットタイプや同素材を用いて開発中の日傘を披露した。
SPACECOOLは、「第9回 東京 猛暑対策展」(2023年7月26〜28日、東京ビッグサイト)で、放射冷却素材「SPACECOOL」の新タイプであるマグネットタイプや同素材を用いて開発中の日傘を披露した。
日傘タイプは局所的なデザインに対応
放射冷却素材のSPACECOOLは、2017年に大阪ガスの社内研究で開発がスタートした製品で、2019年に完成し、2021年4月から一般販売されている。一般販売に合わせて、大阪ガスは素材の販売会社として2021年4月1日にSPACECOOLを設立し、その本社を東京都港区に設置した。
SPACECOOLの特徴は、太陽光と大気からの熱をブロックし熱吸収を抑えるだけでなく、宇宙へ熱を放射することで放熱する点で、ゼロエネルギーで外気より対象物を低温にするフィルムとなっている。放射冷却とは地表面からの熱が宇宙空間へ放出されて冷えることを指し、放射冷却を実現するためには「大気の窓」とされている宇宙空間へ抜ける限られた波長域で熱を放射させなければならない。
この条件を満たすために、SPACECOOLでは、複数の機能性フィルムを積層し、太陽光や大気に対する反射率で95%以上を実現し、熱の放射率も95%以上を達成している。性能に関して、同社が真夏の炎天下で、SPACECOOLと鉄板の温度を比較した結果、鉄板よりSPACECOOLの温度が40℃低いことを確認した他、外気温より2〜6℃低いことを確かめた。
現在、SPACECOOLでは、白あるいは銀のフィルムタイプ、ポリエステルを裏地としたキャンバスタイプ、防炎/高強度あるいは防炎/軽量のターポリンを裏地としたターポリンタイプ、ポリ塩化ビニール(PVC)/ガラス繊維膜材料(B種)あるいは不燃材料を裏地とした膜材料タイプ、白あるいは黒の布を裏地としたファブリックタイプをラインアップしている。
フィルムタイプは裏面がシールになっており貼り付けられるため、屋外機器、工場、簡易施設などの屋根や外壁に貼り付けて、直射日光により生じる熱を放熱し温度を下げる際に役立つ。これにより、温度の上昇を防ぎ、内部の電気/電子機器の劣化/故障や空調機器/ファンによる冷却で発生する電力消費量とCO2排出量を抑えられる。
キャンバスタイプ、ターポリンタイプ、膜材料タイプ、ファブリックタイプは他の素材や生地に縫製できるため、テントやサンシェード、日傘の放熱性を高めるのに貢献するという。同社の説明員は「当社ではキャンバスタイプを縫製したテントと他社の素材を使用した遮熱テントの室内の体感温度を炎天下で比較した。その結果、キャンバスタイプを縫製したテントは他社の素材を使用した遮熱テントと比べ室内の体感温度が10℃低いことが分かった」と話す。
新たなタイプとして2023年7月10日に発売したSPACECOOLのマグネットタイプは裏地に磁石を採用しており、対象物に着脱できる。同社の説明員は「当社では、SPACECOOLのフィルムタイプやキャンバスタイプ、ターポリンタイプ、膜材料タイプ、ファブリックタイプを販売しているが、いずれも着脱して再利用しにくかった。そこで、着脱して再利用できるマグネットタイプを開発した」とコメントした。
また、国内の傘メーカーと共同でSPACECOOLを素材に採用した日傘の開発も進めている。日傘の色は白とシルバーの2種類で、局所的なデザインには対応するという。同社の説明員は「全体的な色を白とシルバーに限定しているのは、これら以外の色を利用するとSPACECOOLの反射率や放射率が低下し放熱性が下がってしまうためだ。しかしながら、部分的に日傘に模様などをデザインできるので、意匠性も高められる」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 徹底した熱対策で高精度な加工が可能な門形マシニングセンタの上位機種
日本電産マシンツールは、門形マシニングセンタの上位機種「MVR-Hx」シリーズの販売を開始した。主軸の熱伸びを抑える軸心冷却機能や、環境温度変化を受けにくい主要構造体を採用するなどの熱対策により、高精度な加工ができる。 - 暑さからの体調不良を検知するスマートシャツと通知サービスを提供開始
NTTテクノクロス、東レ、ゴールドウインは、心拍数と衣服内の温湿度を同時計測できるセンサーと専用ウェアを組み合わせ、暑さによる体調不良の予兆を検知する「暑さ対策用サービス」を開始する。 - シャツ型センサーによる暑熱環境下での体調不良予兆検知サービスを開始
NTTテクノクロスは、シャツ型センサーにより、暑熱環境下での体調不良の予兆を検知する「hitoe暑さ対策サービス for Cloud」を発売する。予兆がある場合は、スマートフォンを介してシャツ型センサーの着用者に休憩を促す。 - 第28回 熱への挑戦
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第28回は、電子機器を設計する上で必ず乗り越えなければならない問題である「熱」について取り上げる。 - “究極の強制空冷”を備えるMac Pro、開発コストを大幅削減したECU
熱対策セミナーにおいて、熱対策が充実しているというMac Proの例や、エンジンコントロールユニット(ECU)の高精度モデル作成によるコスト削減事例が紹介された。 - 「2020東京がなければ新規事業もなかった」、2000億円超の収益を得るパナソニック
パナソニックは、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに関連するビジネスについて、累計販売額が2000億円を超える見通しであることを発表した。