第28回 熱への挑戦:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/4 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第28回は、電子機器を設計する上で必ず乗り越えなければならない問題である「熱」について取り上げる。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2013年7月号の記事を転載しています。
1. 熱問題
この40年、電子機器の熱問題はずっと課題として取り上げられてきました。
1980年代以降、基板レイアウトCADと連動して基板の熱を解析する基板熱解析ソフトもいろいろと製品化されてノートPCの解析などに使われています(図1)。
その当時ですら、ICの単位面積当たりの発熱量は、電気アイロンよりも高い値を示していました。
その後、ICの集積度と動作速度は現在までとどまることなく上昇を続けています。もちろん、集積度と速度の積で消費電力が増えているわけではなく、ICの回路設計では、できる限りの手法を使ってICの消費電力を低減させる努力をしています。
しかし、ICの集積度と動作速度の上昇は消費電力削減のペースを上回り、ICの消費電力と発熱は依然増え続けています。
ICで消費される電力はそのエネルギー全てが熱として外部に放出されます。
ICの消費電力は、電力供給の問題で、特に携帯機器ではバッテリのもちとして問題になります。しかし消費電力は熱の面からも大きな問題となっています。
2. ICの熱対策
ICの熱対策には
- ICの発熱を抑える
- 熱を効率的に拡散させる
の2つの対策があります。
(1)は、ICの内部回路を工夫してICの消費電力を低減させる方法です。
熱は部品の破壊につながったり、寿命を短めたりするばかりでなく、ICの動作速度を落としたり、回路の誤動作など多くの問題を起こします。
さらに、機器の温度上昇は低温やけどを引き起こしたり、操作者に不快感を与えます。
ICの動作温度が上昇するとICの消費電力が多くなり、さらに発熱が多くなります。このような負のループが発生してしまいます。当然バッテリの持ち時間も短縮します。
ICの消費電力を低減させることができれば、発熱を押さえ、熱対策を簡略化できるばかりでなく、バッテリの駆動時間を延ばすことができ、システムとしてのメリットは非常に大きなものとなります。
このためIC各社はICの消費電力低減に注力しています。
(1)はIC内部の設計で、システム設計やセットメーカーではICベンダーに期待するしかありません。
しかし、(2)の熱を拡散させる方法は、システムベンダーの設計者がシステム設計、実装設計で対応する問題です。
また、最近では、ICのパッケージ設計、インタポーザ設計がICチップ設計とシステム設計の間で独立した設計となってきました。
例えば、Nintendo Wii UではチップをCPUはIBM、GPUはAMDが供給し、ルネサスがMCMとしてパッケージングして任天堂がシステム設計をしています(図2)。
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