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第28回 熱への挑戦前田真一の最新実装技術あれこれ塾(2/4 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第28回は、電子機器を設計する上で必ず乗り越えなければならない問題である「熱」について取り上げる。

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3. 発熱を抑える対策

 論理ICに使われているCMOS回路では論理がHighとLowに安定している時は電流が流れず、論理がHighからLowへ、LowからHighへと変化する時(スイッチング)だけ電流が流れます。このデータが変化するときに流れる電流をダイナミック電流と呼びます。

 信号の周波数が低い場合には論理がHigh/Lowに安定している時間が長くCMOS回路は低消費回路の代表でした。 しかし、信号の周波数が高くなると論理が変化している時間の割合が大きくなり、消費電力が大きくなってしまいました(図3)。


図3
図3 CMOSは高速動作すると消費電力が大きくなる

 この状態で消費電力を低減するために電源電圧を小さくして信号の振幅を小さくします。信号振幅を小さくすると、流れる電流が少なくなり消費電力が大幅に削減されます。

 しかし、電源電圧を低くするとトランジスタの動作速度が遅くなってしまいます(図4)。

図4
図4 電源電圧を下げると動作が遅くなる※1)

※1)Ronald Dreslinski他, “Swizzle Switch: A Self-Arbitrating High-Radix Crossbar for NoC Systems”, Hot Chips 24

 本来、CMOS回路はスイッチングしているとき以外にはほとんど電流が流れないのですが、実はトランジスタがOFFになっていても非常に小さな値ですがOFF電流と呼ばれる電流が流れます。

 このため、動作していない回路で、信号がHighかLowに固定されている場合にも電流が消費されてしまいます。

 これは電流が流れない条件で電流が漏れて流れるということでリーク電流(漏れ電流)と呼びます。

 漏れ電流はトランジスタが微細化され、ゲートの間隔が小さくなるほど大きくなります。また、個々のトランジスタがリークしますので、全体のリーク電流はトランジスタの数に比例します。

 ICの微細化で集積されるゲート数が増えるとリーク電流が無視できないほど大きな値となります。

 このリーク電流をなくすためには動作しない回路の電源電圧を0にしてしまえば静止トランジスタに電流は流れません。

 ICの消費電力削減にはダイナミック、リークともにOFFを含めた電源電圧の効率的な制御が有効です。全ての回路をOFFにするわけには行かないので、LSIの内部回路を動作ブロックごとに細かく分割して、各回路ブロックの電圧を細かく制御します。

 まったく動作しない回路は電源電圧を0にし、単に待機しているブロックは、動作するぎりぎりまで電圧を落とし、データ処理量が少なく高速動作を要求されない回路は電圧を落として低速動作、フル動作を要求される回路は電圧を上げるなどきめ細かい電圧コントロールを行います(図5)。

図5
図5 動作しない回路ブロックの電源電圧制御

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