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第28回 熱への挑戦前田真一の最新実装技術あれこれ塾(3/4 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第28回は、電子機器を設計する上で必ず乗り越えなければならない問題である「熱」について取り上げる。

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4. 熱を放出する対策

 ICや部品が消費する電力は熱に変換されますが、一度熱に変換されたエネルギーは、他のエネルギー形態には変化しません。ICや部品が発生する熱は熱の形のまま広くに拡散し低温に希釈され機外に放出します。

 熱の発生源はICチップです。熱の伝播(でんぱ)経路としては、ICチップから発生した熱はICパッケージを伝播して、チップの外部に放出されます。

 ICパッケージの表面から直接機内へ拡散したり、基板に伝わり、基板に拡散したりします。


図6
図6 熱の伝播

 熱の伝播には伝導、対流、放射の3通りがあります(図6)。

 チップで発生した熱はパッケージ内を伝導で伝播します。パッケージ内の熱の伝道効率は材料の伝導率に左右されます。チップで発生した熱を素早くパッケージ外部に放出するためには熱伝導率の高いパッケージ材を使う必要があります。

 表1に、主な材料の熱伝導率を紹介します。


表1
表1 材料の熱伝導率

 カーボンナノチューブやセラミックス、シリコンゴムなどは材料の混合や製造によって値が大きく変化するので参考値を示しています。

 ICのパッケージ材として熱伝導率が高く、熱膨張率が小さい(シリコンに近い)値の材料を各社が開発しています。

 配線基板(インタポーザ)の材料として、シリコンインタポーザはビルドアップのガラス・エポキシに比べ、熱伝導率が高く、膨張率がチップと同じなので、非常に優れていることが分かります。

 エポキシは単体では熱伝導率が低く、熱膨張率が大きいだけでなく脆弱で変形が大きいため、補強材としてガラス繊維をコアとして使います。

 このガラス繊維は単なる機械的な補強だけではなく基板の熱伝導率を高めたり、熱膨張率を抑える働きもあります。

 ガラス繊維は特性の安定化のため、細い繊維を使い、織りを密にして特性を均一化すると同時に有機ガラスなど熱伝導率が高く熱膨張率が小さい材料も開発されています。

 銅やアルミなどの金属は熱伝導率が高いので、ICのパッケージのカバーに金属を使うことがあります。これをヒートスプレッダと呼びます(図7)。

図7
図7 ヒートスプレッダ

 空気は熱伝導率が非常に小さく、ICチップとパッケージが密着していないと、いくら熱伝導率の高い材料でパッケージングしても間の空気の層のためチップの熱が効率よく外部に放出されません。

 このため、チップとパッケージを密着させられない場合にはチップとパッケージの間に熱伝導率の高いシリコンやグリースを使い空気の層をなくしチップの熱を効率よくパッケージに伝達するようにします(図8)。

図8
図8 充填

 パッケージに伝えられた熱は基板に接続されている下面からはBGAのボールを介して基板に伝えられます(図9)。パッケージ上面からは空冷・液冷で機内外に排出されます。

図9
図9 パッケージからの熱の拡散

 基板に伝わった熱は基板を伝導して基板全体に広がります。このとき、基板から対流、伝道、放射により機内や筐体に伝わり放散されます。

 基板のガラスエポキシは熱伝導率が悪く、銅の熱伝導率は高いので、熱の大部分は銅のプレーン層を伝わります。

 このため、LED照明を始めとする得に発熱の高い素子を使った基板では厚い銅箔を使った基板や金属ベースの基板を使います(図10)。

図10
図10 メタルコア基板(TSS http://www.tssg.com/company/index.html

 パッケージ上面からの放熱は一般的には空冷が使われます。

 この場合、ICパッケージの上に放熱器(ヒートシンク)を使いますが、ヒートシンクは表面積を大きくするために複雑な形状をしています。ヒートシンクの表面にはいろいろな長さの辺があり、どこかの辺の長さが信号の波長にマッチングしてしまうとアンテナとなり、電磁ノイズを放射してしまいます。

 このため、ヒートシンクは接地接続をしっかり取ったり、シールディングを施すなど放射ノイズ対策を採る必要があります(図11)。

図11
図11 ヒートシンクをシールドする(http://www.nintendo.co.jp/wiiu

 小型携帯機器では大きなヒトシンクが使えないので、筐体をヒートシンクとして用います。この場合にはやはりパッケージ表面と筐体に間にシリコンやグリスなどを使いパッケージ表面の熱を効率よく筐体に伝えるようにします。

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