トヨタと三菱重工が月面探査で協力、走行技術から再生型燃料電池まで:宇宙開発(3/3 ページ)
トヨタ自動車と三菱重工は、有人与圧ローバや月極域探査計画向けLUPEXローバの開発状況を発表した。両社は業務提携し、2024年に打ち上げのLUPEXローバの開発成果を、2029年打ち上げ予定のルナクルーザーにも生かす。
三菱重工の取り組み
三菱重工は、国際宇宙ステーションプログラムに参画し、宇宙飛行士が軌道上で作業する日本の実験や、国際宇宙ステーションに物資を届ける補給機の開発に携わってきた。無人で飛行するが、宇宙ステーションにドッキングした後は中に人が入ってモノの出し入れなどで作業するため、中で作業しても安全なように設計されている。有人与圧ローバの中で過ごすための構造づくりに三菱重工のノウハウが生かせる。また、月周回有人拠点であるゲートウェイや居住棟となるI-HAB向けの生命維持技術や環境制御技術も三菱重工が手掛けており、トヨタ自動車が取り組む有人与圧ローバに応用される。
LUPEXローバとは
三菱重工のLUPEXローバは、月の水資源の利用可能性の調査や、重力天体表面探査技術の獲得を狙いとしている。日本とJAXAはH3ロケットやローバシステムなどを、インドのISRO(Indian Space Research Organisation)は着陸機システムなどを手掛ける。LUPEXローバには展開式の太陽光発電パネル、ナビゲーション用のカメラを装備。太陽光発電が折りたたまれた状態で打ち上げる。また、月面探査のための採掘採取機構が月面を深さ1.5mまで掘削し、任意の深さの土壌のサンプルを採集する。
トヨタ自動車のルナクルーザーと同じく、険しい地形で安全かつ正確に目的地までローバが移動することが求められる。トヨタ自動車は地上を走る自動車で培った自動運転技術で、LUPEXローバの航法誘導制御技術をサポートする。先行して月面環境を走行したデータをルナクルーザーに生かす。
人類の活動領域は地球の低軌道から月や火星に広がっていこうとしている。宇宙を人類の持続可能な活動拠点としていくには、目的地でしっかり活動し、生活できる居住のための技術が不可欠だ。三菱重工は月周回や有人拠点のゲートウェイ、将来の月面基地など、人が滞在する拠点を中心とした開発計画に参加することで、さまざまな技術を獲得、蓄積していきたい考えだ。物資の輸送と、ゲートウェイの居住など物資を運んだ先で人が活動する拠点の両方に持続的に取り組む。
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