トヨタと三菱重工が月面探査で協力、走行技術から再生型燃料電池まで:宇宙開発(2/3 ページ)
トヨタ自動車と三菱重工は、有人与圧ローバや月極域探査計画向けLUPEXローバの開発状況を発表した。両社は業務提携し、2024年に打ち上げのLUPEXローバの開発成果を、2029年打ち上げ予定のルナクルーザーにも生かす。
未知のオフロードに対応した走行性能と自動運転
月面はクレーターや岩石、傾斜、レゴリス(細かい粒子の砂)などがある複合環境で、これらに対応したタイヤの開発や駆動力の制御、走破性能、電力消費を同時実現することが求められる。金属タイヤではブリヂストンと協力、足回りや転倒リスク予知など要素技術を開発しており、今後は原寸大のリアルなテスト車両でオフロード走行のテストを行う。地上を走るクルマにも安心安全な走行性能の実現で生かせるという。
ルナクルーザーは、道路や地図、GPS情報がなく、過去の走行データもない中で自動運転を行う。月面での自己位置推定や障害物の検知、その回避経路の策定などが技術的な課題となる。そこで、電波で自己位置を推定する電波航法や、恒星の位置から姿勢を推定するスタートラッカー、3次元の加速度から速度や移動量を推定する慣性航法など、新たな航法技術を開発中だ。走行可能な路面の判定にはLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を使う。
オフロード走行性能の検証と同様に、自動運転技術もテスト車両と月面を模擬したテストコースで開発、評価を行う。地上においてもさまざまな環境で活用できる技術になると見込む。
月面探査ミッションを少しでも快適に
月面探査ミッションでは2人の宇宙飛行士が1カ月間、同じ空間で生活する。非常に狭い空間であり、精神的な負荷が高いため、できる限り快適な居住空間を提供するとともに、1日最大8時間、6日間連続のオフロード走行に対応した操縦機能を提供することを目指している。月面の景色は特徴が少ないモノクロなので、目視による走行ルートの判別が難しい。
こうした課題や目標に向けて、原寸大のモックアップを制作し、リアルな居住空間を想定した空間設計や居住性の研究や、ドライビングシミュレーターを使ったデバイスや運転支援の検証を行う。
この他にも空気がない月面での放熱、車体の構造、地球との通信など、さまざまな開発要素があるという。これらの要素をインテグレートすることが大変重要な取り組みとなる。また、真空で放射線を受け続ける環境であること、上は120℃、下は−170℃という寒暖差、月面から何かを持ってくるということ、月面でモノを実際に動かすということに関しては、人類としても知見が少ない。JAXAをはじめとするパートナーにさまざまな知見をもらいながら、トヨタ自動車と三菱重工は自動車産業と宇宙産業の強みを融合して挑戦していく。
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