トヨタと三菱重工が月面探査で協力、走行技術から再生型燃料電池まで:宇宙開発(1/3 ページ)
トヨタ自動車と三菱重工は、有人与圧ローバや月極域探査計画向けLUPEXローバの開発状況を発表した。両社は業務提携し、2024年に打ち上げのLUPEXローバの開発成果を、2029年打ち上げ予定のルナクルーザーにも生かす。
トヨタ自動車と三菱重工は2023年7月21日、有人与圧ローバ(愛称ルナクルーザー)や月極域探査計画向けLUPEXローバの開発状況を発表した。両社は業務提携し、2024年に打ち上げのLUPEXローバの開発成果を、2029年打ち上げ予定のルナクルーザーにも生かす。
三菱重工が持つ宇宙機のインテグレーション技術や耐宇宙環境技術、有人宇宙滞在技術に、トヨタ自動車が持つ燃料電池や自動運転、ユーザーエクスペリエンスなどモビリティで培った技術を組み合わせる。2029年に向けて、居住空間と移動機能の両立、10年間で1万km以上の走行性能を目指す。
トヨタ自動車の取り組み
トヨタ自動車は2019年に月面での有人探査活動に必要なモビリティの開発で宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協業を発表。三菱重工など多くの協業先の支援を受けながらプロジェクトを進めており、現在は初期検討から共同研究が完了し、2024年の本体開発の開始に向けた先行研究開発の段階にある。
2023年度中にパワートレインや駆動系、タイヤも含めたテスト車両をつくり、必要なスペックを検討するという。軽いおがくずで滑りやすい状況を再現したり、荒れた路面をつくったりしたテストコースを利用しているが、2024年度には新しいテストコースをトヨタの研究開発拠点に設ける。
ルナクルーザーの実現に向けては(1)再生型燃料電池、(2)オフロード走行性能、(3)オフロード自動運転、(4)ユーザーエクスペリエンスという4つの技術的なテーマがある。
再生型燃料電池(Regenerative Fuel Cell、RFC)は、月における14日間の夜を無事に過ごすため、月における昼の期間に太陽光のエネルギーを活用することを目指している。三菱重工の水電解技術を採用する。具体的には、昼の期間の太陽光発電の電力を水電解システムに供給し、水素と酸素に分解。燃料電池用に水素を貯蔵する。夜の期間にこの水素で燃料電池を動かし、電力を生み出す。発電で生まれる水も貯蔵し、昼の期間の水電解に使用する。
長期的に安定して探査を実施するには、何らかの形でエネルギーを現地調達することが将来的な目標になる。地産地消で全て賄えないかと研究に取り組んでいる。今後はタンクの軽量化やシステムの小型化、高効率化が課題になる。月面での稼働を模擬した実証実験で機能や性能も確認していく。
再生型燃料電池はリチウムイオン電池と比べて質量やサイズでアドバンテージがあるという。太陽と水があれば電気が生み出せるのは非常に重要な技術であると位置付け、2029年の打ち上げを待たずに要素技術を地上にも還元する。離島やへき地、災害時の避難所などでの活用を見込む。
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