オリンパス相模原物流センターにおける自動倉庫導入の舞台裏(後編):物流のスマート化(2/2 ページ)
オリンパスの主力国内物流拠点である相模原物流センターは自動倉庫導入により業務効率化を果たした。本稿では、自動倉庫導入の背景や自動倉庫システムと併せて取り入れた工夫、プロジェクトの進め方などについて前後編に分けて紹介する。
2024年問題にも荷主側として協力、医療機器業界の共同配送も検討
物流業界では、働き方改革関連法によって自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで労働力不足が大きく顕在化する「2024年問題」が大きな話題になっている。
製造業にとっても2024年問題への対応をはじめとする“持続可能な物流”の実現は大きな課題だ。オリンパス SCM日本統括バイスプレジデントの田中亮氏は「人命に関わる医療機器や関連資材を病院などに供給するオリンパスにとって、医療を止めない物流の実現は極めて重要だ。われわれは物流業者ではないが、2024年問題に対して荷主側としてやれることがあるだろうと考えている」と述べる。
2024年問題では、労働力不足の顕在化で貨物数と輸送手段の需給バランスが崩壊し、オリンパスなどの製造業をはじめとする荷主企業はコスト負担とリードタイムの見直しを迫られる。ここで起こり得るのが、荷主側主導による安価な輸配送業者の再選定の加速である。「荷主側が再選定のために安易に見積もりを取ると、大手と比べて規模の劣る中小の物流企業が価格対抗し、結果として物流業界がさらに疲弊するのではないか。このような“物流生態系”に悪影響を及ぼす引き金を引くようなことはしてはならない」(原氏)。
オリンパスは、医療業界の枠を超え、一企業の社会責任として2024年問題に取り組む考えだ。まず、先述の安易な見積もりのような、近視眼的な発想による安易な業者変更はしない。その一方で、貨物の絶対数と容積の圧縮を可能な限り行う。貨物数や容積が半分になれば、物流配送に必要なトラックの数も半分に減らせるからだ。そして、集荷締め切りであるカット時間の変更や納品リードタイムの変更にも柔軟に対応する。これらの施策によって物流業者にかかる負荷を減らしていく。
さらに興味深い取り組みとなるのが、医療業界における物流の共同化やシェアリングの検討加速である。オリンパスの相模原物流センターでは、2020年9月に売却したカメラ事業の物流も手掛けていたが、そこで国内デジタルカメラ業界におけるカメラの共同配送に取り組んでいた歴史がある。原氏は「製品とサービスの開発や販売で競争しつつ、物流は共同で行うという考え方はあってしかるべきだ」と指摘する。
既に各業界で共同配送の取り組みは進みつつあるが、医療機器業界の場合は物流の仕組みが複雑なこともあって全体の約6%にとどまっている。そこで、医療機器の受発注の共通フォーマット化に約20年前から取り組んでいる@MD-NET(日本医療機器ネットワーク協会)の仕組みなどを参考にするなどして検討を進めていく方針だ。
これらの他、相模原物流センターとしては、地元である相模原市への経済活性化に貢献していく構えである。相模原市産業創造センターとのコラボレーションによる若手技術者との育成支援を行う中では、最近は若手技術者の興味が「製造」から「物流」に移っているという手応えなども得ている。
さらに、相模原地区における企業の枠を超えた物流に関する情報交換や共有機会の創出も検討している。田中氏は「各企業の物流部門の底上げに貢献したい。自動化技術などをはじめ共有できることは多い」と述べている。
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