オリンパス相模原物流センターにおける自動倉庫導入の舞台裏(後編):物流のスマート化(1/2 ページ)
オリンパスの主力国内物流拠点である相模原物流センターは自動倉庫導入により業務効率化を果たした。本稿では、自動倉庫導入の背景や自動倉庫システムと併せて取り入れた工夫、プロジェクトの進め方などについて前後編に分けて紹介する。
オリンパスは2023年4月18日、同社の主力国内物流拠点である「相模原物流センター」(相模原市南区)を報道陣に公開した。本稿では、同センターが自動倉庫を導入した背景や、自動倉庫システムと併せて取り入れた工夫、プロジェクトの進め方などについて前後編に分けて紹介する。
前編では、自動倉庫導入の背景や各自動倉庫システムの概要、それと併せて取り入れた工夫などについて解説した。今回の後編では、約5年にわたった自動倉庫導入プロジェクトの進め方や、物流業界の「2024年問題」に対してオリンパスが検討している取り組みなどを紹介する。
プロジェクト成功の最大の要因は2年強の“空走距離”
相模原物流センターにおける自動倉庫導入プロジェクトは、まずはフェーズ1でAutoStoreを導入して先行稼働した後、フェーズ2でバケット型自動倉庫とユニシャトルを導入して全ての機器を連動させるという形で段階的に進めた。これは、相模原物流センターにおける既存業務を止めない“ランニングチェンジ”を目的としたプロジェクト実行計画に基づいている。オリンパス ロジスティックス&トランスポーテーション ディレクターの原英一氏は「2015年に川崎地区から相模原に物流センターを移転してからさほどの時間が経過していないこともあり、既存業務を続けながらのランニングチェンジは必須だと考えた」と説明する。
ただしここで重要なのは、自動倉庫導入プロジェクトのキックオフのタイミングが2018年度末となっていることだ。前編で原氏が述べた通り、相模原物流センターにおいて自動化を中心とする業務改革プロジェクトの必要性を認識したのは、中期経営計画が発表された2016年3月のことだ。そこから、プロジェクトのキックオフまで2年強の期間が空いていることになる。
この2年強の期間は“空走距離”として、調査/研究、そして企画のフェーズに充てられた。「今回のプロジェクト成功の最大の要因はこの空走距離の間に、他社事例研究や自動化技術の習得、システム全体像と効果の仮説立てまでをしっかりと検討できたことにある。2年強というと遠回りに見えるが、実際には一番の近道だった」(原氏)。
例えば、AutoStoreの日本国内における最初の導入事例は2016年になる。その時点からオリンパスでも注目しており導入を検討していたが、実際に同社の物流センター業務にどのように活用できるかは未知数の部分が多かった。原氏は「われわれの物流業務の自動化技術に関する知識レベルも高いとはいえない状況で、どこまで有効活用できるかは分からなかった。そこで、プロジェクトチームで研究会を月1回行い、他社事例を研究しながら、われわれの物流業務でどのように活用できるかをラップアップし理解を深めていった。また、ここでもう一つ重要だったのが『うちは遅れているのではないか』という認識を醸成することだった」と述べる。
2年強の“空走距離”を経て設定したプロジェクトの目標は、2019年度比で出庫行数が38%増の1万1000行、ロジスティードに委託している作業者の人数(=委託費)が31%減の81人、保管可能数が20%増の8150パレットを、2025年度に実現するという内容になった。そして、この目標を達成するための手段として導入したのが、AutoStoreとバケット型自動倉庫、ユニシャトルという自動化設備だった。「製品サイズが中型以下で、出荷頻度が高い処置具などの消耗品をメインターゲットに絞った。スコープや大型処置具、内視鏡システムなど大型の製品については、従来と同じく手作業での物流業務に対応することにした」(原氏)という。
これらの結果として、全ての自動化設備の導入が完了した2021年1月から約半年後の2021年7月には、出庫行数が38%増、委託費が31%減、保管可能数が29%増となり、約4年前倒しで全目標を達成することができた。原氏は「これら3つの目標達成以上に重要な成果だと考えているのが、プロジェクトに携わった多くの人材の成長に寄与したことだと考えている」と強調する。
実際に今回のプロジェクトは、企画立案から機器の選定、レイアウト、システム設計、移行に至るまでほぼ全てを自社リソースで完結しており、コンサルティングや外注は利用していない。また、構内物流業務の多くを委託していることを考えれば、ロジスティードにプロジェクトの多くを任せるという方向性もあり得るが「人の命に関わる医療機器の供給責任があることを考えれば、われわれ自身の手で完遂するべきだと考えた」(原氏)。その一方で、プロジェクトの目標として委託費の削減を掲げている以上、ロジスティードの理解と協力も不可欠だった。原氏は「柔軟に協力してもらえたことは大変感謝している」と述べる。
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