オリンパス相模原物流センターにおける自動倉庫導入の舞台裏(前編):物流のスマート化(1/3 ページ)
オリンパスの主力国内物流拠点である相模原物流センターは自動倉庫導入により業務効率化を果たした。本稿では、自動倉庫導入の背景や自動倉庫システムと併せて取り入れた工夫、プロジェクトの進め方などについて前後編に分けて紹介する。
オリンパスは2023年4月18日、同社の主力国内物流拠点である「相模原物流センター」(相模原市南区)を報道陣に公開した。自動倉庫ロボット「AutoStore」や村田機械のバケット自動倉庫などの最新設備を投入するとともに、従来とは異なるGTP(Goods to Person)を取り入れた業務設計を推し進めることで、従来と比べて1日当たりの出庫行数(オーダー数)で38%増、同31%の省人化、製品の保管可能数で同21%増といった、当初は2025年度を想定していた目標を前倒しで達成。今後は、設計開発や工場などとの連携によるさらなる物流の効率化を目指す。
本稿では、オリンパスの相模原物流センターが自動倉庫を導入した背景や、自動倉庫システムと併せて取り入れた工夫、プロジェクトの進め方などについて前後編に分けて紹介する。
東日本大震災を受けて川崎地区から相模原に物流拠点を移転
オリンパスの国内物流拠点は、相模原の他に、東大阪(大阪府八尾市)、白河(福島県白河市)、弘前(青森県弘前市)の4カ所にある。白河と弘前は、工場で使用する製造用部品や補修部品を取り扱う社内向けの拠点であり、消化器向けで世界シェア70%を誇る内視鏡や、内視鏡とともに使用する処置具などの消耗品を医療機関に向けて出荷しているのは、相模原と東大阪の2拠点になる。東西の2カ所に物流拠点を置くことで、地震などの災害があっても医療機関への製品供給が滞らない体制を整えている。
相模原物流センターは、川崎地区にあった物流拠点を2015年に移転する形で開設された。オリンパス ロジスティックス&トランスポーテーション ディレクターの原英一氏は「川崎では東日本大震災で大きなダメージを受けるとともに、エネルギープラントの多い京浜工業地帯の内部にあり地震と併せて発生する火災の影響を大きく受ける可能性があることが分かった。そこで、地盤が強固な場所かつ免震構造を持つ建屋を求めて移転したのがこの相模原物流センターだ」と語る。
大和ハウス工業が手掛けるDPL相模原の4階と5階に入居しており、延べ床面積は倉庫棟が約3万m2、事務棟が約600m2。国内外合わせた1日当たりの取り扱い規模は、出荷処理行数が6750行、出荷箱数が4430個、出荷重量が28トン、出荷容積が188m3、トラック車両入出台数が約100台となっている。構内業務はロジスティード(2023年4月に日立物流から社名変更)に委託しており、輸配送業務も30社に委託している。取り扱い製品は、一粒レベルの小さな消耗品から最終製品である内視鏡システムに至るまで、小さなものから大きなものまで含めて合計5250SKUに達する。
消耗品比率の拡大に対して物流三悪の加速にどう対応するか
相模原物流センターが自動倉庫の活用による効率化を目指した背景には、オリンパスの事業方針変更がある。2016年3月に発表した中期経営計画において、インストール型から症例数ベース型へ医療ビジネスモデルをシフトする方針を打ち出した。これは、これまでの内視鏡のモノ売りから、内視鏡の利用に伴う消耗品で売り上げを拡大するという考え方への移行を意味している。その一方で、事業目標として年率5〜6%の売上高成長の維持、20%以上の営業利益率が掲げられていた。
原氏は「物流部門としては、消耗品の出荷量が増えるが利益率確保のためにコストをかけてはならないということだと受け取った。折しも既に物流業界での人手不足が叫ばれ始めていた時期であり、消耗品比率の拡大で物流三悪と呼ばれる『多頻度』『小ロット』『短納期』の加速にどう対応するかが大きな課題になっていた。そこで倉庫の自動化を中心とした業務改革のプロジェクトの実施を決意した」と説明する。
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