リスキリングの取り組み進む、DXには「管理職や中堅層の育成が必要」:キャリアニュース
リンクアカデミーは「リスキリング対象者層のITスキル教育」に関する調査結果を発表した。リスキリングに「既に取り組んでいる」は、2022年調査から3倍以上増加した。また約3割が、DX推進には管理職や中間層のIT教育が必要と考えていた。
全国でキャリアスクールを運営するリンクアカデミーは2023年5月8日、「リスキリング対象者層のITスキル教育」に関する調査結果を発表した。
同調査は2022年2月と2023年3月に実施した。調査対象は経営者、人事担当者などのリスキリング施策導入者層とそれ以外の従業員が該当するリスキリング対象者層で、2022年はリスキリング施策導入者層507人、リスキリング対象者層508人の合計1015人、2023年はリスキリング施策導入者層521人、リスキリング対象者層533人の合計1054人から回答を得た。なお、同調査でのリスキリングは、「現職とは異なる職種、特にデジタル職種に転換するためにスキルを塗り替えること」と定義している。
まず、リスキリングについて何らかの取り組みをしているかについて、リスキリング施策導入者層、リスキリング対象者層の回答を2022年、2023年調査で比較した。
リスキリング施策導入者層は「既に取り組んでいる」が、2022年調査は15.9%で2023年は52.6%。「取り組むことを決めている、検討している」は31.0%から42.4%となり、「何も取り組めていない」は53.1%から5.0%に減っている。
リスキリング対象者層は、「既に取り組んでいる」が2022年調査では1.4%、2023年は42.8%と大幅に増えた。「取り組むことを決めている、検討している」も5.9%から44.1%に増えている。「何も取り組めていない」は92.7%から13.1%と激減した。
次に、リスキリング対象者層に「リスキリングについて会社側にどのような機会を求めますか」と尋ねた。その結果、2022年調査は1位が「ITスキルに関する研修の提供」(34.8%)、2位が「ITスキルに関するeラーニングの提供」(29.5%)、3位「外部からのIT人材(指導者)の確保」(25.4%)となった。
2023年調査の1位は、「ITスキルに関する研修の提供」(52.0%)で2022年と同じ順位だが、回答割合に増加傾向が見られた。2位は「OJTの場の提供」(40.0%)、3位が「外部からのIT人材(指導者)の確保」(38.3%)だった。
続いて、「リスキリングによって具体的にどのようなスキルを高めたいですか」と尋ねたところ、2022年調査のトップ3は、「ExcelやPowerPointなどの基本的スキル」(28.4%)、「マーケティングなどの知識」(25.8%)、「プログラミングなどの高度なスキル」(22.1%)だった。2023年調査では「プログラミングなどの高度なスキル」(30.2%)、「ノーコードやRPA(ソフトウェアロボットによる業務自動化)などの中程度のスキル」(23.6%)、「マーケティングなどの知識」(16.0%)となっている。
リスキリング施策導入者層には、DX推進における課題を尋ねた。その結果、2022年調査の1位は「そもそもDX戦略を描けていない」(30.0%)、2位が「特に課題はない」(28.0%)、3位が「プロジェクトを推進するコア人材が不足している」(24.1%)となった。
2023年調査の1位は「DX推進のための投資判断ができない」(35.3%)、2位は「レガシーシステムが残ってしまっている」(34.0%)、3位が「プロジェクトを推進するコア人材が不足している」(32.8%)だった。2022年調査の2位「特に課題はない」は、2023年調査では6位(7.5%)と大きく減少しており、リスキリングの取り組み状況が進捗したことで新たな課題が浮上していることがうかがえる。
DX推進に「管理職や中間層のITスキル教育が必要」が約3割
DX推進の課題の1つ「プロジェクトを推進するコア人材が不足している」について、リスキリング施策導入者層にIT人材の不足をどのように解決しようとしているか尋ねた。2022年調査のトップ3は「中途採用」(46.8%)、「既存従業員へのITスキル育成」(30.0%)、「フリーランスなどへの業務委託」(24.1%)となった。2023年調査は1位が「中途採用」(43.0%)で、2位が「派遣会社やアウトソーシングの活用」(34.7%)、3位が「既存従業員へのITスキル育成」(28.6%)となっている。
次に「既存従業員へのITスキル育成に向けて、どのような機会を提供していますか」と尋ねたところ、2022年調査のトップ3は「外部からのIT人材確保」(37.5%)、「ITスキルに関する研修の提供」(36.5%)、「OJTの場の提供」(25.4%)となった。2023年調査の1位は「ITスキルに関する研修の提供」(46.3%)で2022年調査から10%近く増加している。2位は「外部からのIT人材確保」(43.4%)、3位は「OJTの場の提供」(39.9%)となっている。
また、既存従業員に高めてほしいITスキルを尋ねた。2022年調査では、上位に「ExcelやPowerPointなどの基本的スキル」(23.3%)、「プログラミングなどの高度なスキル」(20.3%)、「マーケティングなどの知識」(18.0%)が挙がった。
2023年調査の1位は「ノーコードやRPAなどの中程度のスキル」(27.8%)、2位が「ExcelやPowerPointなどの基本的スキル」(25.0%)、3位が「プログラミングなどの高度なスキル」(23.6%)となっている。
最後に、リスキリング施策導入者層に、DX推進を阻む人的要因や課題をどのように解決したいと思うか尋ねた。その結果、「中堅層の(IT研修など会社主導での)育成」(31.3%)が最も多く、「管理職の(IT研修など会社主導での)育成」(30.3%)、「若手の(IT研修など会社主導での)育成」(25.9%)が続いた。
管理職や中堅層にIT研修が必要と思う理由として、「上が変わらないと社員がついてこない」「管理職の意識が変わらないと会社全体が変わらない」「まずは指導者がITについて熟知しないといけないと思う」などが挙げられている。
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