帝人が売上高1兆円超えも営業利益は7割減、天然ガス価格高騰や工場の火災が影響:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
帝人は、2022年度の売上高が前年度比10%増の1兆188億円となるも、営業利益は同70.9%減の129億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は177憶円の損失となったと発表した。
2023年度の業績見通し
2023年度の売上高は前年度比3.1%増の1兆500億円となる見通しで、営業利益は同172.1%増の350億円になると見込んでいる。売上高は、マテリアルセグメントでの生産能力増強の効果発現などによる販売量増加や前年度の米欧拠点での生産トラブルの解消などで増収になると予想している。
営業利益は、マテリアルセグメントで生産性改善、追加的な販売価格改定、増産増販などの収益性改善施策の発現、前年度一時的に発生した米欧拠点での生産トラブルの解消などを行うとともに、ヘルスケアの後発品参入の影響をカバーし増益となる見通しだ。
また、複合成形材料やアラミド繊維、ヘルスケアの事業で収益性の改善を図る。複合成形材料では、工場設備を復旧するとともに、北米事業の改善が見られない場合は事業売却などの可能性も含め事業継続可否を判断する。
アラミド繊維では、被災した原料工場を復旧し、2023年度の第1四半期にフル稼働する予定だ。ヘルスケアでは、「事業基盤を生かせる希少疾患と難病向けの医薬品導入活動」や「見合ったリソース規模への構造改革」などを目的に、創薬ソリューションプロバイダーであるアクセリードと創薬研究に関する合弁会社設立の基本合意を2023年2月に締結している。
加えて、帝人の本社スタッフでは2025年度までの固定費40億円削減に向け着手する。経営体制変革として、経営役員と事業担当役員を設置しグループ経営責任と事業収益責任を明確化にするとともに、事業本部をCEO直轄に集約し組織階層をフラット化して事業運営機能を強化する。
このように課題事業の収益性改善と役員/スタッフの経営体制変革を中心に、全社で構造改革を断行して、2023年度までに300億円以上の収益改善を行う。
帝人 代表取締役社長執行役員 CEOの内川哲茂氏は「当社では長期ビジョンのテーマとして『未来の社会を支える会社』を掲げている。2023年には、どのように未来を支えるかを明確にするために、中長期の方向性として、マテリアルセグメントで『地球環境を守る会社』を、ヘルスケアセグメントで『より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社』というテーマを示した。特に、ヘルスケアでは全方位に向けたこれまでの展開ではなく、より支えを必要とする希少疾患や難病などの疾病領域に対応していく。今後、マテリアルセグメントでは地球環境を守るための明確な取り組みについて検討し、2024年度に公表予定の新中期経営計画に盛り込む方針だ」とコメントした。
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