ポリエステル衣料品からPU弾性繊維を除去する新たな異素材除去技術:リサイクルニュース
帝人フロンティアは、ポリエステル衣料品からポリウレタン弾性繊維を除去する異素材除去技術を開発した。
帝人フロンティアは2023年4月10日、ポリエステルのケミカルリサイクルで、前処理工程に新たな処理剤を用いて、ポリエステル衣料品からポリウレタン弾性繊維(以下、PU弾性繊維)を除去する異素材除去技術を開発したと発表した。
これにより、従来では困難だった、PU弾性繊維を含むポリエステル衣料品から高品質なリサイクルポリエステルを生産することが可能となる。前処理工程では衣料品の脱色も行えることから、効率的なリサイクル工程の構築を後押しする。
染料の脱色工程にも使用可能
異素材除去技術では、新たな処理剤によりPU弾性繊維を膨潤させ、化学結合を切断し、溶解することで、ポリエステル繊維へ影響を与えずにPU弾性繊維を除去することを実現する。新たな処理剤は、同時に染料を含む異物も除去し、脱色工程にも使える。処理剤は使用後に回収して再利用することも可能だ。
今回の異素材除去技術を用いて生成されたリサイクル原料は、既存のポリエステルのケミカルリサイクル工程に投入できる。そのため、PU弾性繊維を含んだ使用済みのポリエステル衣料品のリサイクル推進に貢献する。
同社は2022年年10月から、異素材除去技術の実証試験を実施しており、資源循環と省エネルギーを両立するリサイクル技術の確立に向けて改良を重ねている。今後は、資源循環型社会実現に貢献するため、ポリエステル繊維を中心とした「繊維to繊維」のリサイクルを達成するための技術開発や仕組み構築を引き続き進める。
開発の背景
近年、衣料品市場では、カジュアル化が進行するとともに、速乾性/防シワ性といった取り扱いやすさや着用快適性を求める需要が高まり、ポリエステル繊維とPU弾性繊維を組み合わせたストレッチ性を有する衣料品が増加している。
一方、資源循環の観点から、使用済み衣料品のリサイクル推進が望まれているが、従来のポリエステル向けのケミカルリサイクル技術では、100%ポリエステル製品を前提としているため、PU弾性繊維が含まれる場合は、再生品の品質悪化を招き、リサイクルが困難だった。
そこで、帝人フロンティアは、ケミカルリサイクルの前処理工程に新たな処理剤を用いることで、PU弾性繊維を除去し、ポリエステルのみを分離する技術を開発した。
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