フォードが帝人のガラス繊維複合材を採用、エンジン回りのNVHを大幅低減:材料技術
帝人グループで軽量複合材料の開発、生産、販売を手掛けるコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックスは2019年8月20日、Ford Motor(フォード)の「エクスプローラー」の2020年モデルで部材が採用されたと発表した。
帝人グループで軽量複合材料の開発、生産、販売を手掛けるコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックスは2019年8月20日、Ford Motor(フォード)の「エクスプローラー」の2020年モデルで部材が採用されたと発表した。
採用されたのは、ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の成形材料「GF-SMC」(Glass Fiber-Sheet Molding Compound)で、フォードとコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックスは「世界初」(同社)の二重壁構造のコンポジット性エンジンシュラウド(エンジンルーム内の部品を保護する構造材)を開発した。
GF-SMCを採用するのは、NVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)を大幅に改善するため。共同開発したエンジンシュラウドは、エンジン後部をカバーするとともに、エンジンルームの両サイドにあるストラットタワーまで覆い、エンジンルームとフロントバルクヘッドの間に密閉性の高い空間を設ける。これにより、エンジンルーム内で発生する騒音を消散させるという。
また、GF-SMC製エンジンシュラウドは、従来のスチール素材では困難な薄肉化と複雑な成形を4点の部品で実現した。これにより、エンジンルーム内に収めることができた。重量は約5.5kgと軽量で、エンジンルーム内の電気部材の熱保護機能も持つという。GF-SMC製エンジンシュラウドは、米国オハイオ州にあるコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックスのコノート工場で製造する。
帝人グループは、マルチマテリアルなサプライヤーとしてソリューション提案を強化している。2030年には、自動車向け複合材料製品の売り上げを20億ドル(約2130億円)に増やす計画だ。素材選定から部品設計、グローバルでの安定供給、軽量化実現に向けた材料拡充や他社との協業を進めていく。
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