米国樹脂部品メーカーが横浜に新本社、日系自動車メーカーへの対応を強化:材料技術
クーパー・スタンダード・オートモーティブ・ジャパンは2018年9月4日、横浜市内で会見を開き、本社機能とエンジニアリングセンターを集約し、横浜に新本社を開設したと発表した。
クーパー・スタンダード・オートモーティブ・ジャパンは2018年9月4日、横浜市内で会見を開き、本社機能とエンジニアリングセンターを集約し、横浜に新本社を開設したと発表した。
同社は米国に本社を持つ樹脂部品メーカーだ。エンジニアリングセンターは、CADやCAE解析、3Dプリンタ、材料試験設備などの機能を充実させ、日系自動車メーカー向けの提案やサポートを強化する。現在の売上高のうち、日系自動車メーカーの比率は5%に満たない。これを10年かけて2倍に増やしたい考えだ。日本に生産拠点を持たないが、日本法人は西川ゴム工業やイノアックコーポレーションと協業しており、必要に応じて生産面で協力を得ていく方針だ。
新本社の面積は502.5m2、現在の人員は14人でこのうち6人がエンジニアだ。JR横浜駅からほど近い立地の利便性を生かして人材採用も積極化する。2020年に向けて、製品評価に対応できる試作設備を順次導入するとともに、エンジニアを増員する計画だ。
EVの軽量化に商機
クーパー・スタンダードは、ウェザーストリップなどのシーリング、燃料やブレーキフルードのホース、防振部品を手掛ける自動車向けの樹脂部品メーカーだ。タイヤメーカーのCooper Tire(クーパータイヤ)にルーツを持つ。2004年にクーパータイヤから分離した。2017年の売上高は36億ドル(約4000億円)。内訳はシーリングが53%、燃料やブレーキフルードのホースが21%、流体輸送システムが14%、防振ゴムが9%となっている。
同社はアイデア公募の社内制度を活用して新技術を積極的に製品化している。その1つがシーリングの「Fortrex(フォートレックス)」だ。3割の軽量化と耐候性の向上、騒音低減を同時に実現できるのが特徴だという。車内の静粛性向上に貢献できるため、電気自動車(EV)など電動車で強みを発揮できると見込む。
この他にも、軽量化と耐摩耗性、非導電性、エンジンルーム向けの耐熱性の要件を満たしながらリサイクルと長寿命化を可能にしたホース「ArmorHose(アーマーホース)」、耐腐食性を向上し、製品寿命を改善するコーティング技術「MagAlloy(マグアロイ)」などがある。
この中でもアーマーホースは、EVの軽量化で提案していく。「これまでホースは軽量化の対象として見られていなかった。EVはモーターやバッテリーなど冷却が必要な部品が多いが、レイアウトの都合から冷却水を流すホースが長くなる傾向にある。既に、Tesla(テスラ)の「モデルX」向けで採用されている。日系自動車メーカーにも注目してもらえるのではないか」(クーパー・スタンダード・オートモーティブ・ジャパン 代表取締役の山崎岩男氏)。
同社は売り上げの大部分が自動車向けだが、需要動向に左右されにくい経営体制を構築するため、非自動車分野にも注力する方針だ。自動車向けで培った材料技術を建築や消費財などに向けて幅広く展開していく。2018年内に非自動車分野の新製品の生産を本格化する方針だという。2018年時点での自動車向けを除いた売上高は2億5000万ドル(約278億円)だが、これを10億ドル(約1100億円)に増やす目標を掲げている。
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