パナソニック コネクトがブルーヨンダーに2億ドル投資、次世代SCM基盤構築を加速:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニック コネクトが同社傘下のブルーヨンダーの事業戦略を説明。2023〜2025年の3年間で2億米ドル(約270億円)を投資してSCMに関わるエンドツーエンドをカバーしたSaaSベースの統合スイートとなる次世代プラットフォームの開発を進める。
「次世代サプライチェーンプラットフォーム」はSnowflake上に構築
2023〜2025年の3年間で2億米ドルの投資を行うが、そこで開発に注力するのが「次世代サプライチェーンプラットフォーム」である。同プラットフォームでは、マイクロサービスによるアジリティ強化や、クラウド環境のシングルテナントからマルチテナントへの移行に加えて、データ構成をSnowflakeベースのシングルデータクラウドに変更する方針を打ち出している。「エンタープライズソフトウェアをSnowflake上に構築し、全ての企業のサプライチェーンを単一のプラットフォーム上で管理できるようにする」(アンゴーヴ氏)という狙いがある。
また、ブルーヨンダーの全てのSCMソリューションをエンドツーエンドで統合し“統合スイート”として展開する方針だ。計画、倉庫管理、輸送、オーダー管理、Eコマースなどから成るSCMプロセスは、各プロセスに焦点を当てたポイントソリューションの利用が一般的だが、これらのSCMプロセス全てを同一プラットフォーム上で管理できるようにしていく。さらに、パナソニック コネクトとの連携によりロボットをはじめとするエッジとの連携した自動化も進める。加えて、ChatGPTなどで話題の生成AIを活用することでSCMソリューションの顧客の利便性を高める“Copilot(副操縦士)”的な機能の搭載も進めていく考えだ。
2023〜2025年の3年間は投資フェーズとして、粗利率向上につながるSaaS売上高継続率(NRR)と販売成長を支えるSaaS年間経常収益(ARR)を重視するとともに、営業経費の削減とEBITDA向上を進める。これらの目標達成に向け、7つのVCP(Value Creation Plan)を策定した。
パナソニック コネクトとブルーヨンダーのシナジーでは、倉庫管理ソリューションを展開するゼテス(zetes)との連携によるトラック管理ソリューションのPoC(概念実証)の進展に加えて、日本市場でのブルーヨンダーソリューションの販売が好調に推移している。「世界で最も成長した市場の一つだった」(アンゴーヴ氏)。
パナソニック コネクトの業績と関わる年度ベースでの調整後営業利益の2022年度実績と2023年度見通しも公開した。追加戦略投資やシナジー投資を除いた実力値ベースとしては、2022年度の68億円から2023年度は28%増の87億円で増益となる見込みだ。2023年度は追加戦略投資で84億円、シナジー投資で28億円を計画しているため実際の調整後営業損益としては25億円の赤字となるが、3年間累計で2億米ドルの投資を着実に進めて、2026年以降の投資回収フェーズにつなげ、早期に利益フェーズに移行させたいとしている。
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