ブルーヨンダー新CEOのアンゴーヴ氏が会見「サプライチェーンは世代交代すべき」:製造マネジメントニュース
ブルーヨンダーの新CEOに就任したダンカン・アンゴーヴ氏が東京都内で会見。同氏は「サプライチェーンをエンドツーエンドでカバーするソリューションを提供しているのはブルーヨンダーだけだ。パナソニックが展開するセンサーやカメラなどから得られるデータを活用し、顧客の取るべきアクションの精度を高められるようにしていく」と語った。
パナソニック コネクトは2022年8月30日、同年7月にブルーヨンダーの新CEOに就任したダンカン・アンゴーヴ(Duncan Angove)氏の来日に合わせて、東京都内で会見を開いた。アンゴーヴ氏は「サプライチェーンについて、計画系から物流、流通までを含めたエンドツーエンドでカバーするソリューションを提供しているのはブルーヨンダーだけだ。パナソニックが展開するセンサーやカメラなどから得られるデータを活用して可視化のレベルを向上し、顧客の取るべきアクションの精度を高められるようにしていく」と語った。
会見には、パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD) グループCEOの楠見雄規氏も登壇した。楠見氏は「2022年4月からの持ち株会社制導入による“専鋭化”について、明確な方向性で取り組んでいるのがパナソニック コネクトだ。パナソニックHDとしても、パナソニック コネクトがブルーヨンダーを中核として成長事業に定めているサプライチェーン領域に大きく期待している。そのブルーヨンダーの新たなCEOに、サプライチェーン領域で25年の業務経験を持つとともに、SaaSビジネスをゼロの状態から10億米ドルまで育てたアンゴーヴ氏が就任することは大変うれしい」と述べる。
アンゴーヴ氏は、前CEOのギリッシュ・リッシ(Girish Rishi)氏の退任により2022年2月から暫定CEOを務めてきたマーク・モーガン(Mark Morgan)氏に替わり、同年7月11日にブルーヨンダーの新CEOに就任した。これまでレテック(Retek)や、レテックを2005年に買収したオラクル(Oracle)でリーダーシップの役職を務めた後、2010年にERPベンダーのインフォア(Infor)の社長に就任。インフォアでは、オンプレミス中心だった同社のERPソリューションをSaaSビジネスに移行させた。楠見氏が述べた「SaaSビジネスをゼロの状態から10億米ドルまで育てた」は、このインフォアでの成果になる。2018年にインフォアを退任した後、2019年にはテクノロジーに焦点を当てたプライベートエクイティファンドであるArcspringの共同創業者にもなっている。これらの他、2018年からハネウェル(Honeywell)の取締役も務めている。
10年に1回のペースで新たなパラダイムが出てくるサプライチェーン
ブルーヨンダーは2021年度の売上高が11億米ドル(約1500億円)で、従業員数は約6000人、グローバルで3000社以上の顧客を有している。特に製造業に広く浸透しており、世界の製造業トップ100社のうち61社がブルーヨンダーの顧客となっている。アンゴーヴ氏は「サプライチェーンは10年に1回のペースで新しいパラダイムが出てくるが、今がまさにそのときだ。コロナ禍、地政学的な問題、気候変動などサプライチェーンの課題は山積している。さらに1970年代以来となるインフレも発生するなどサプライチェーンは世代交代すべきであり、実際に多くの企業がコロナ禍前にはあまり興味を持っていなかったサプライチェーンへの投資も活発化している。これまでのポイントソリューションに替えて、エンドツーエンドをカバーするブルーヨンダーのソリューションの導入を広げていく」と強調する。
ブルーヨンダーのソリューション「Luminate」を「世界に先駆けたサプライチェーンのインダストリークラウド」とするアンゴーヴ氏だが、今後の成長に向けて重視しているのが、パナソニック コネクトとの協業により強化されるエッジ対応だ。「今後データの75%はエンタープライズシステムの外側で生成されるようになる。その外側のデータをリアルタイムに収集する上でパナソニック コネクトのセンサーやカメラの技術は不可欠だ」(同氏)という。
また、インフォアでSaaSビジネスを拡大させたアンゴーヴ氏の手腕にも期待が集まりそうだ。同氏は「インフォアの時とは違い、既にサプライチェーンマネジメントのSaaSソリューションとしてトップのポジションにあることは大きな強み。イノベーションを加速し、サプライチェーンを変革していきたい」と強い意気込みを見せている。
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