「ChatGPTに匹敵する」ドイツ新興の生成AI、HPEが製造業への導入例を披露:ハノーバーメッセ2023
Hewlett Packard EnterpriseはHANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)において、ドイツのAIスタートアップAleph Alphaの生成AIを用い、自然言語での対話で産業用ロボットの操作をサポートするシステムのデモを行った。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)は世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」(2023年4月17〜21日)において、ドイツのAI(人工知能)スタートアップAleph Alphaの生成AIを用い、自然言語での対話で産業用ロボットの操作をサポートするシステムのデモを行った。
マルチモーダル、説明可能性、オンプレミス実装など特長
Aleph Alphaは、2019年創業のドイツ・ハイデルベルクに拠点を置くAIスタートアップで、独自の大規模言語モデル「Luminous」シリーズを開発、展開している。Luminousは、テキストだけでなく画像のプロンプトも処理可能なマルチモーダル機能や、生成したコンテンツを検証し、そのソースまで追跡する説明可能性などを特長としている。さらに、クラウドだけではなくオンプレミスでも実装可能で、情報漏えいのリスクも避けられる。HPEの説明担当者は、「多くの関心が寄せられる生成AIだが、企業がその利点を活用するには、説明可能で、信頼できるものでなければならない。だからこそわれわれはAleph Alphaとパートナーシップを結んだのだ」と語っていた。
また、Aleph Alphaは2023年2月、700億パラメ―ターの同社最大の言語モデルLuminous-Supremeと、世界の主要なAI言語モデルであるOpenAIのGPT-3 davinci(1750億パラメーター)やMetaのOPT(1750億パラメーター)および、BigScienceのBLOOM(1760億パラメーター)の性能を比較したベンチマーク結果を発表。常識推論や自然言語推論、読解などの複数のカテゴリーでそれらに匹敵する性能だったといい、同社は、「Luminousのパラメーターは競合の半分以下であり、同レベルのパフォーマンスで2倍の効率性を実現している」と主張している。同社はさらに、3000億パラメーターを持つ最新バージョン「Luminous-World」をテスト中で、2023年後半にリリースを予定しているという。
各顧客にカスタマイズした生成AIアプリケーションを開発
Aleph Alphaは、HPEと構築したAIスーパーコンピュータ「alpha ONE」をLuminousの言語モデルのトレーニング/運用に使用している。また、HPEは、顧客にとって有意義なユースケースの定義や計画、既存IT/プロセス環境への生成AIの統合およびオンプレミス環境の構築/運用のサポートなどの役割を担い、Aleph Alphaと共同で顧客ごとにカスタマイズした生成AIによるアプリケーション開発を行うとしている。
今回、両社が用意したのは、自然言語および画像を用いて工場作業員とコミュニケーションする産業用ロボットのAIアシスタントのデモだ。AIアシスタントは、産業用ロボットの数百ページのマニュアルを用いてトレーニングしていて、画像やテキスト(デモでは音声入力していた)作業者の質問に自然言語で対応。ロボット操作の効率と安全性に大きく貢献するとしている。
デモでは、作業者がタブレットでロボットの写真を撮影してシステムにアップロードしたうえで、「このロボットはキャリブレーション済みか」と尋ねると、画像から判断して即座に返答していた。また、「ロボットを起動するにはどうすればよいか」との作業者の質問には、スタートボタンの位置を回答、さらに、作業者がスタートボタンの写真を撮り、「これがスタートボタンでよいか」と追加で質問すると、「はい。これがスタートボタンです」と答えるなど、自然な会話形式で作業者のサポートをする様子が実演された。
HPEは、今回のデモについて、「生成AIが生産現場にもたらす可能性のほんの一端にすぎない」と説明。このほか、技術文書やサプライヤー、供給契約、法的規制、コスト、CO2排出に関する情報などを学習させることで、AIアシスタントの能力を工場の生産環境全体やサプライチェーンに拡張することができるとしている。
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