生産性向上だけじゃない、パナソニックコネクトがChatGPTを全社導入した理由:製造業×生成AI インタビュー(1/2 ページ)
世界中で話題の「ChatGPT」。国内企業で早期に全社導入を決定した1社がパナソニック コネクトだ。ChatGPT導入に至った背景や活用の可能性について聞いた。
「ChatGPT」というワードを聞いたことがない人は、もはや存在しないのではないか。米国のOpenAIが公開したこの対話型AI(人工知能)は、2022年11月に公開されるやいなや世界中に衝撃を与えた。自然言語での問いかけに対して流ちょうな言葉で答えを返す。回答の正確性が保証されない点は注意しなければならないが、高精度で文意を読み取り応答する能力の高さには誰もが驚くだろう。
ChatGPT自体の“ブーム”がいつまで続くかは分からない。ただ、文章や画像などのコンテンツを生成する「生成AI」の存在感は無視できなくなったことは確かだ。産業界でもChatGPTをはじめとする生成AIへの注目度は極めて高い。将来の事業展開や業務効率性改善に欠かせなくなると考えて、活用可能性の検討を急ピッチで進める企業も多い。
既に、ChatGPTの大規模な導入を実施、検討していると発表した国内企業も出ている。その1社がパナソニック ホールディングスだ。同社は2023年4月14日、約9万人のグループ国内全社員を対象に、ChatGPTをベースに構築したAIアシスタントサービス「PX-GPT」を利用開始したと発表した。
これに先駆けてChatGPTをいち早く導入し、効果を検証していたグループ企業がある。それがパナソニック コネクトだ。ChatGPT導入に至った背景は何か。実際に業務に活用して見えた可能性はあるか。パナソニック コネクト 執行役員 CIO IT・デジタル推進本部 マネージングダイレクターの河野昭彦氏と、同社 IT・デジタル推進本部 シニアマネージャーの向野孔己氏に話を聞いた。
1カ月の利用回数は1万7000件
パナソニック コネクトは2023年2月17日に「ConnectGPT」を国内全社員約1万2500人に向けて展開した。ConnectGPTはマイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」を活用して開発されている。当初はGPT-3.5の利用が主だったが、同年3月13日にChatGPTの法人向けモデルが公開されると、即日、そちらも利用できるようにした。Azure OpenAI Service上でプレビュー版が公開されたGPT-4の利用開始も検討中だ。
なお、ConnectGPTの導入プロジェクト自体は2022年10月からスタートしていたようだ。「ChatGPTが国内で広く話題になってから導入を検討し始めたと思われることも多いが、実際にはそれ以前から行っていた」(向野氏)。
ConnectGPTは基本的に、一般公開されているChatGPTと同様の感覚で使える。ただし、社内活用の利便性を向上するため、パナソニック コネクト独自の機能も幾つか搭載した。
まず、社員が業務での活用シーンをイメージできるように、「専門的なアドバイスを聞く」「ITサポートを聞く」など15個の活用方法をサンプルとして確認できるようにした。また自動翻訳機能を実装して、質問内容の自動英訳を可能にした。ChatGPTは日本語よりも英語で質問をする方が回答精度が高いとされている。
ChatGPTによる回答の“堅さ”や“緩さ”といった「揺れ幅」の調整機能も搭載した。この他にも、回答結果を社員が5段階で評価できる機能や、社員が思い付いたChatGPTによる業務改善のアイデアを社内でシェアする機能もある。
ConnectGPTの運用開始から約1カ月間で、利用回数は1万7059件、質問数は5万5380件に上った。1回の利用で平均約3個の質問が寄せられている計算になる。なお、ChatGPT利用時の評価点は5点満点で平均約3.75点となっており、社内で一定の評価を受けている様子が伺える。「仮説のアイデア出しにとても役立つ」「人に聞くほどではないちょっとしたことを質問できるのが便利」「プログラム開発のアドバイスが的確」といった好意的なコメントも多く寄せられているようだ。
同様に、ConnectGPTをベースに構築したPX-GPTに対する期待も社内で高まっているようだ。向野氏は「PX-GPTの導入に感激した(パナソニック コネクト社外の)グループ社員が、『パナソニック内で一番使い倒します』と社内チャットで宣言する様子も見られた」と語る。
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