エッジAIの3つの課題を克服するルネサス、組み込み向けではNVIDIAより優位:人工知能ニュース(3/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスが同社のエッジAIの事業状況や今後の展開などを説明。エッジやエンドポイントといった現場側へのAIの実装では「DRP-AI」をはじめとする同社の技術やパートナーとのエコシステムが生かせる点を強く打ち出した。
学習済みAIライブラリ/アプリケーションを無償で提供
組み込みシステムにおけるAI導入の課題の2つ目となる「3つの壁」は、ルネサスが無償で提供する学習済みAIライブラリと、ユースケースに最適化した学習済みAIアプリケーションに加えて、エッジ/エンドポイントAIで最も充実しているとするエコシステムパートナーによって打破していきたい考えだ。
現時点で12の学習済みAIライブラリがあるが、これらはMITライセンスのオープンソースソフトウェアとしてGitHubで公開されているので、個別の契約なしでそのまま量産適用できる。さらに、各学習済みAIライブラリにユースケースを最適化した学習済みAIアプリケーションは現在役40種類を展開している。「顧客の9割くらいからAIモデルの使い方が分からないという相談がある。この学習済みAIアプリケーションは、AIエキスパートではない方に利用してもらえるように仕立てており、顧客はユースケースを選ぶだけでAIアプリケーションを試せる。これによってAI開発工数を大幅に削減することが可能だ」(野村氏)。なお、学習済みAIアプリケーションについては2023年内に100種類以上に拡充させる方針である。
エッジ/エンドポイントAIの実用化において競合他社との違いを強調するのが、充実したエコシステムパートナーの存在である。野村氏は「こと組み込みシステム向けのAIという観点で見れば、NVIDIAよりも充実していると考えている。量産モジュールパートナーの存在も心強い」と述べる。
今回のRenesas AI Tech Dayでは、現行のDRP-AI搭載製品であるRZ/V2MやRZV2Lを活用したエコシステムパートナーのAIソリューションが多数展示されていた。例えば、NSWは、RZV2Lを搭載するAVNET製の150米ドルと安価な組み込みボード「RZBoard」とWebカメラの組み合わせによる食品製造時の不良検知AIを、スタートアップのNEXT-SYSTEMは、RZV2LとWebカメラ、骨格検知AIを組み合わせたハンドジェスチャーリモコンのデモを披露した。
マイコン向けAIでも一手
組み込みシステムにおけるAI導入の課題の3つ目であるとなる「個別のAI実装」に対しては、2022年7月に買収を完了したReality AIのソリューションを活用していく。
ここまで紹介してきたDRP-AIは、画像処理など主にハイエンドからミッドレンジのAI処理性能が求められる用途に向けた技術である。しかし、信号処理など非画像系のAIは、マイコンをベースにより消費電力などを抑えた形でのAI活用が検討されていることも多い。
汎用マイコンの大手ベンダーであるルネサスにとって、マイコンでもスケーラブルにAIを活用するソリューションが必要である。そこで買収したのが、非画像領域の高度なセンシングを実現する高効率なエッジ/エンドポイントAI向けのソリューションを手掛けるReality AIだ。Reality AIのツールを用いることで、AIモデルのビルドからハードウェア最適化、モデルの可視化といったAIモデルの開発工程を大幅に削減できる。また、モーター制御やHVAC(暖房、換気、空調)、音響ベースADAS(先進運転支援システム)センシングなどユースケースごとのチューニングが可能なアドオンツールも用意していく方針だ。
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