エッジAIの3つの課題を克服するルネサス、組み込み向けではNVIDIAより優位:人工知能ニュース(2/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスが同社のエッジAIの事業状況や今後の展開などを説明。エッジやエンドポイントといった現場側へのAIの実装では「DRP-AI」をはじめとする同社の技術やパートナーとのエコシステムが生かせる点を強く打ち出した。
次世代「DRP-AI」は消費電力当たりAI処理性能が桁違い
ただし、現行のDRP-AIでは高度化が続くAIモデルの推論処理、特に映像処理に対して十分な性能があったかというと必ずしもそうではなかった。NVIDIAがエッジAIボードとして展開を強化してきた「Jetsonシリーズ」は、価格99米ドルの「Jetson Nano」や、さらにAI処理性能を強化した「Jetson Xavier NX」、最新の「Jetson Orin Nano」「Jetson Orin NX」などを矢継ぎ早に投入しており、AI学習でデファクトスタンダードとなっているのと同じアーキテクチャに基づきAIモデルをそのままエッジで利用できる点を訴求するなど攻勢を強めている。学習だけでなくエッジAIでも覇権を握ろうとしているのだ。
この状況に対して、ルネサス側からの新たな一手となるのが、現行のDRP-AIから大幅な性能向上を図った次世代「DRP-AI」である。2022年12月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同開発成果として発表されており、今回のRenesas AI Tech Dayでは報道陣に向けてNVIDIAのJetson Nanoとの動作比較デモンストレーションを披露している(既報)。
次世代DRP-AIの最大の特徴は、消費電力1W当たりのAI処理性能で10TOPS(毎秒10兆回)を達成している点だ。野村氏は「組み込みシステムにおけるAI導入の課題の1つ目である発熱への対応を克服できる。NVIDIAの場合おおむね1W当たり1TOPSであり、AI処理性能を高めるとその分発熱も大きくなるが、次世代DRP-AIはその心配がない」と強調する。
会見では次世代DRP-AIとJetson Xavier NXとの比較データも示された。消費電力は次世代DRP-AIの1.0Wに対してJetson Xavier NXが14.2W、畳み込み演算のレイテンシが同5.3msに対して36.5msなど、AI性能、電力効率とも圧倒している。
また、エッジAIの推論処理の効率を高める「枝刈り」でも次世代DRP-AIは大きな効果が得られる。枝刈りを適用した次世代DRP-AIであれば、Jetson Xavier NXと比べてAI性能で18倍、電力効率で30倍に達するという。この次世代DRP-AIを搭載する製品は、AI処理性能が80TOPSの「RZV2x」と同15TOPSの「RZV2xx」の開発が進められている。
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