パナソニックが開発をリードする有機CMOSイメージセンサーは何がすごいのか:組み込み開発 インタビュー(2/2 ページ)
裏面照射型に次ぐCMOSイメージセンサーのブレークスルーとして期待されている有機CMOSイメージセンサー。業界内で開発をリードし、実用化に積極的に取り組むパナソニックHDの開発担当者に話を聞いた。
「正確な色再現性」によりアプリケーションが具体化
2023年3月には、有機CMOSイメージセンサーが持つ高い機能性として、あらゆる種類の光源下における良好な色再現性についての学会発表を行っている。
裏面照射型CMOSイメージセンサーでは、シアン光やイエロー光、マゼンダ光といった特定色に強度が偏った光源では色再現性を確保できないことが課題だった。有機CMOSイメージセンサーは、光電変換層が薄いため原理的に隣接画素への入射光を低減できるとともに、電気的な画素分離を行う電荷排出電極を設けることで画素境界部の不要電荷を排出し、有機薄膜下部の電極により光の透過を抑制できるため、RGB各色の混色が起きにくいことが確認された。
この正確な色再現性という特徴が加わることで、有機CMOSイメージセンサーの実用化に向けたアプリケーションもより具体化しつつある。佐藤氏は「工場の製品製造や食品の検品など検査との親和性はかなり高い。幅広いダイナミックレンジ、グローバルシャッターとの組み合わせで高度な検査を実現できるようになる。もちろん、放送機器などで8Kの高精細な映像データを記録/保存するという観点でも、正確な色再現性は大きな力になるだろう。これらに加えて、近赤外撮像との組み合わせで健康モニター/肌ケアといったアプリケーションの開拓も期待できる」と意気込む。
西村氏も「国内ではNHKやソニーが技術報告を行っており、海外でもサムスン電子やフランスのイゾルグ(Isorg)が開発に取り組むなど、次世代イメージセンサーとして有機CMOSイメージセンサーは注目されている。その中で実用化に近いポジションにあるのは当社だと自負している。顧客あってのことなので時期は言明できないが、開発サイドの思いとして数年後には実用化したいという思いはあり、そのための活動に注力している」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CCDやCMOSを超える裏面照射型CMOSセンサって?
デジタルカメラやビデオカメラに搭載されている撮像素子「CCD」と「CMOS」の違いを基に、両者の課題を補う新技術を紹介します - 裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表
パナソニックは、半導体技術の国際学会「ISSCC2016」で3つのCMOSセンサー技術を発表した。従来のCMOSセンサーに用いられているフォトダイオードを、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)に置き換えることによって感度やダイナミックレンジを向上する技術になる。 - マシンビジョンへの応用期待、近赤外線域撮像が可能なCMOSセンサー技術を開発
パナソニックは、イメージセンサーの同一画素内で近赤外線域の感度を電気的に変更できる電子制御技術を発表した。赤外線カットフィルターなどが不要となり、イメージセンサーの小型モジュール開発などに応用できる。 - パナソニックが有機CMOSセンサーを披露、高解像かつWDRでGS搭載の三方良し
パナソニックは、「第4回 4K・8K映像技術展」において、開発中の有機CMOSセンサーを展示するとともに、同センサーを用いて試作した8Kカメラで撮影した映像をリアルタイムで見せるデモンストレーションを披露した。 - パナソニックが有機イメージセンサーを工場とインフラへ、色再現性の高さも魅力
パナソニック ホールディングスは、「画像センシング展2022」において、開発中の有機イメージセンサーの工場や社会インフラにおける活用を意識した展示を行った。2016年2月に学会発表した有機CMOSセンサーは実用化に向けた技術開発が大きく進展しており、今回はさまざまな現場における有効性を示した形。 - シアン光やマゼンダ光でも正確に色再現、パナソニックの有機CMOSイメージセンサー
パナソニック ホールディングス、開発中の有機CMOSイメージセンサーによってあらゆる種類の光源下で良好な色再現が可能になると発表した。