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裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表車載半導体(1/4 ページ)

パナソニックは、半導体技術の国際学会「ISSCC2016」で3つのCMOSセンサー技術を発表した。従来のCMOSセンサーに用いられているフォトダイオードを、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)に置き換えることによって感度やダイナミックレンジを向上する技術になる。

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 パナソニックは2016年2月3日、半導体技術の国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)2016」で3つのCMOSセンサー技術を発表した。従来のCMOSセンサーに用いられているフォトダイオードを、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)に置き換えることによって感度やダイナミックレンジを向上する技術になる。

表面照射型から裏面照射型へ

 パナソニックの技術を説明する前に、まずはデジタルカメラやスマートフォンなどに広く採用されている裏面照射型CMOSセンサーの構造について説明しよう。

 裏面照射型CMOSセンサーは、撮像対象がある光の入射方向から見て、マイクロレンズ、カラーフィルタ、受光部以外の部分に光が入らないようにする金属シールド(遮光膜)、受光部となるシリコンフォトダイオード、半導体回路となる金属配線の順番に構成されている。

CMOSセンサーの表面照射型(左)と裏面照射型(右)の構造比較
CMOSセンサーの表面照射型(左)と裏面照射型(右)の構造比較

 裏面照射型CMOSセンサーが登場する以前の表面照射型CMOSセンサーは、シリコンフォトダイオードよりも金属配線が上層にあった。受光部であるシリコンフォトダイオードが金属配線による影響なしに光を効率よく取り込めることから、裏面照射型CMOSセンサーの需要は拡大している。デジタルカメラやスマートフォンのカメラでは既に裏面照射型CMOSセンサーが主流であり、現在は監視カメラなどの産業用途、自動車の運転支援システムなど車載用途にも広がりを見せている。

フォトダイオードを光吸収係数が大きな有機薄膜に置き換え

 今回パナソニックが発表した有機薄膜CMOSセンサーは、従来のCMOSセンサーの受光部として利用されてきたシリコンフォトダイオードを、より光吸収係数が大きい有機薄膜に置き換えている。従来のシリコンフォトダイオードの場合、入射する光を電気信号に変換し切るために2〜3μm程度の厚みが必要だった。今回の有機薄膜は光吸収係数が大きいので、シリコンフォトダイオードの4分の1〜6分の1となる0.5μmの厚さで済む。なお、この有機薄膜は富士フイルムが提供した。

裏面照射型CMOSセンサー(左)と有機薄膜CMOSセンサー(右)の構造比較
裏面照射型CMOSセンサー(左)と有機薄膜CMOSセンサー(右)の構造比較(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 このため、裏面照射型CMOSセンサーでも光線入射角が30〜40度だったところを、有機薄膜CMOSセンサーは60度まで拡大できる。そして、斜めから入射する光を効率よく利用するできるので、混色のない忠実な色再現性を可能になるとともにレンズの設計自由度が増し、カメラの高性能化や小型化につなげられる。

 また裏面照射型CMOSセンサーでは、遮光膜となる金属シールドを形成するために受光部分の面積が制限されるという課題があった。有機薄膜CMOSセンサーは、ほぼ全面に有機薄膜を形成できることから、裏面照射型CMOSセンサーに対して1.2倍の感度を実現でき、暗いところでもクリアな映像を得ることができるとしている。

 有機薄膜CMOSセンサーは、従来のCMOSセンサーと大きく異なる点がもう1つある。従来のCMOSセンサーは、シリコンフォトダイオードで、光を電気信号に変換する機能と信号電荷を蓄積する機能の両方を行っていた。これに対して有機薄膜CMOSセンサーは、有機薄膜で光を電気信号に変換し、信号電荷の蓄積は金属配線のさらに下層にある回路部で行う。

 光電変換を行う有機薄膜と、信号電荷の蓄積や電気信号の読み出しを行う回路部が分かれていることは新たなメリットを生み出す。有機薄膜を自由に選択すれば、波長や感度など、光電変換の特性を自由に設定できるし、回路部にはCMOSセンサーに求められる高速、広ダイナミックレンジ、高飽和といったような機能に対応する回路の集積も容易になる。

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