裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表:車載半導体(2/4 ページ)
パナソニックは、半導体技術の国際学会「ISSCC2016」で3つのCMOSセンサー技術を発表した。従来のCMOSセンサーに用いられているフォトダイオードを、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)に置き換えることによって感度やダイナミックレンジを向上する技術になる。
明暗2つの感度検出セルで同時撮像、ダイナミックレンジは123dB
この有機薄膜CMOSセンサーの基本的な特性を基に、パナソニックは2つの技術を発表した。1つは「ダイナミックレンジ123dBの明暗差を鮮明かつ時間ずれなく撮影を可能にする技術」。もう1つは「従来比約10倍の明るさまで忠実に画像を撮像できる高機能グローバルシャッタ技術」である。
「ダイナミックレンジ123dBの明暗差を鮮明かつ時間ずれなく撮影を可能にする技術」では、回路部の構成を自由に設計できる利点を生かし、「高感度セル」と「高飽和セル」という2つの感度検出セルを1画素内に設けている。高感度セルは、高感度画素電極+小蓄積容量+容量結合型ノイズキャンセル構造で、高飽和セルは、低感度画素電極+大蓄積容量+従来型ノイズキャンセル構造となる。
1画素内に明暗2つの感度検出セルを備えることにより、明るいシーンと暗いシーンを異なる構成のセルで同時に撮像できるので、1回の撮像で従来のCMOSセンサーよりも広いダイナミックレンジを確保できるという寸法だ。今回の技術を適用した有機薄膜CMOSセンサーの場合、従来のCMOSセンサーと比べて100倍となる123dBというダイナミックレンジを実現している。
従来のCMOSセンサーで広いダイナミックレンジの撮像を行う場合、明るい画像と暗い画像を交互に撮像するマルチフレーム方式や、1枚の画像の中で明るいラインと暗いラインを交互に撮像するシングルフレーム方式などが用いられている。
今回の有機薄膜CMOSセンサーでは、明るい状態と暗い状態を、交互ではなく同時に撮影している。このため、高精度な高速撮像や高速高精度な動体検出も可能になるという。
また、高飽和セルでは、低感度の状態で、読み出し時間以外は常に信号電荷を蓄積している。車載カメラや業務放送用カメラでは、一定の周波数で点灯するLEDや蛍光灯による表示を正しく撮影できないLEDフリッカや蛍光灯フリッカという問題があった。高飽和セルであれば、これらのフリッカの影響が出にくい。
有機薄膜CMOSセンサーは、有機薄膜と電荷蓄積部を金属配線で接続する構造なので、、蓄積電荷を完全に読み出すことができない。このため、画素(信号電荷蓄積ノード)リセット時のリセットノイズの影響を受けるという課題がある。高感度セルに採用した容量結合型ノイズキャンセル構造は、発生したリセットノイズ自体をキャンセルするためのものだ。
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