ひじきをつかんで容器に供給、総菜盛り付けロボットで食品工場の自動化を推進:FAニュース
コネクテッドロボティクスは多品種対応と省スペース化を実現した総菜盛り付けロボットシステムや業界初となる高速蓋閉めロボットシステムの開発に成功したことを発表した。東京都内で開かれた「“ロボフレ”による惣菜産業革命で人手不足解消」の記者会見の会場で一部の実機を披露した。
コネクテッドロボティクスは2023年3月22日、多品種対応と省スペース化を実現した総菜盛り付けロボットシステムや業界初となる高速蓋閉めロボットシステムの開発に成功したことを発表した。東京都内で同日開かれた「“ロボフレ”による惣菜産業革命で人手不足解消」の記者会見の会場で一部の実機を披露した。
近年、核家族化の進展や共働き世帯の増加を背景に、調理済みの食品を購入して自宅などで食べる中食の市場規模が拡大している。一方で、日本の少子高齢化で人材不足が課題となっていながら、弁当、総菜などの製造工程は多品種小ロットであるため、特に盛り付け工程には多くの人手が必要とされていた。
コネクテッドロボティクス 代表取締役の沢登哲也氏は「食品業界は多品種少量生産で商品が不定形であり、かつ日持ちのしない日配品であるため、そのダイナミックさや時間的制約が機械化を困難にしている」と語る。
その中、コネクテッドロボティクスは2022年に経済産業省の「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」および農林水産省の「農林水産物・食品輸出促進緊急対策事業のうちスマート食品産業実証事業のうち、モデル実証事業」に採択された日本惣菜協会の協力企業として、ロボットシステムの開発に取り組んできた。
この取り組みを通して、コネクテッドロボティクスはトレー供給一体型および省スペース型の総菜盛り付けロボットシステム「Delibot」、超高速蓋閉ロボットシステム「Futappy」を開発した。
Delibotは不定形な食材を決められた重量を計測してつかみ、製品トレーに盛り付けるロボットシステムだ。記者会見の会場で披露された省スペース型は、エプソンの2台のスカラーロボットが食材の入った専用コンテナから一定量を把持し、ロボットアームの手元にある計測器で測定後、トレーに盛り付ける。一定の重量範囲から外れた量を把持した場合は、ロボットが食材を離してつかみ直す設定になっている。
トレー供給一体型と比べると設置面積を4分の1まで削減した。作業者1人分の幅1200mmのスペースに2台のロボットが収まり、1台のロボットが1人分の作業量を担うため、生産性は2倍になる計算だ。トレー供給機を外に切り出したことで、盛り付けロボットシステム自体は多彩な容器に対応できるようになった。スカラーロボットは食品機械用のグリスを使用し、さらにシャフトを蛇腹で覆うなど食品製造工程向けの措置を取っている。
関東でスーパーマーケットを展開するベルクに対して商品を供給するホームデリカの工場に2台4セットを導入する。ベルク 代表取締役社長の原島一誠氏は「10年前の2倍とまではいかないが、工場の建築費はますます上昇しており、さらに高騰することが予想されている。小型化、省スペースが求められているのは間違いない」と語る。会場では特に生産量が多いというひじきを盛り付けるデモンストレーションが披露された。きんぴらごぼうやほうれん草のおひたしなどにも適用可能という。
容器供給時にひじきの重量を厳密に一定にするのではなく、後工程のウエイトチェッカーで計量した重量を基に販売価格を決める方式にしたことで生産性を向上した。高い重量精度が求められると、ロボットが把持する際のつかみ直し回数も増えてしまう。ロボットの生産性を高めるため不定貫売りにした。
Futappyは、供給機構に蓋をセットすると1枚ずつ切り離し、コンベヤーを伝って所定の位置に送り出す。そして、上流工程から流れてきた容器に対して、ロボットのハンドが吸着した蓋を嵌合(かんごう)する。1時間当たり1200〜1500個の嵌合が可能となっている。また、現場の状況に応じて多品種の蓋閉めに対応できる。
大きさはコンベヤー上で766mm、コンベヤー外で616mmと、おおむね作業者1人分の肩幅のサイズになっており、既存のラインを延長することなく設置できる。コンベヤーから機体の背面までは約1200mm。同ロボットシステムは、埼玉県の食品メーカーであるデリモに2台導入予定となっている。
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