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ロボットが新たな食体験を創造する、調理全体の自動化目指すTechMagic羽田卓生のロボットDX最前線(5)(1/3 ページ)

「ロボット×DX」をテーマに、さまざまな領域でのロボットを活用したDXの取り組みを紹介する本連載。第5回は、TechMagicが開発した調理自動化ロボット「P-Robo」を取り上げる。

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※MONOist編集部より

「ロボット×DXの最前線」は「羽田卓生のロボットDX最前線」に改称いたしました。「連載記事アラート」を設定されていた方は、お手数ですが再度ご登録をお願いいたします。

引き続き、本連載をご愛読いただければ幸いです。


 外食産業は労働集約的産業の代表例だ。とくに調理などは「経験」と「感覚」が重要な要素になるため自動化が難しいと思われてきた。その解決に取り組むのがTechMagic(テックマジック)だ。

 TechMagicが開発する調理自動化ロボット「P-Robo」を厨房に設置し、同社が運営も行う東京都の恵比寿にあるスパイスヌードル専門店「Magic Noodle香味麺房」を取材した。同社のP-Roboがいかに活躍しているかを解説したい。


Magic Noodle香味麺房[クリックして拡大]

TechMagic 代表取締役社長 CEOの白木裕士氏(右)、Magic Noodle香味麺房 店長の木村光児氏(左)

⇒「羽田卓生のロボットDX最前線」バックナンバーはこちら

配膳ロボットの導入は進むものの……

 外食産業の課題を一言でまとめると「人への依存が大きい産業」だということではないだろうか。加えて、全産業の中でも労働生産性が低い部類だといわれている。製品/サービスの取り扱い単価は小さく、業務の自動化率も高くない。結果、売り上げ創出に多くの労働者が必要となっている。

 さらに手作業に依存するが故に、調理過程にもばらつきが生まれやすい。これが原価率の上昇にも影響する。調理ミスや原材料の使いすぎなどが発生してしまうからだ。

 こうした事情を背景に、外食産業のロボット導入は急速に進んでいる。導入を積極的に進める大手企業としてはすかいらーくホールディングスが挙げられる。既に系列店舗2100店舗にロボット導入を完了したと報道されているが、これはすかいらーく系列全店舗の約70%にあたる数字だ。


すかいらーくホールディングスが導入を進めるネコ型配膳ロボット「BellaBot」[クリックして拡大] 出所:Pudu Roboticsのリリースより引用

 コロナ禍での非対面接客のニーズや、賃金の上昇、採用難などが外食産業側の新たな課題として生じている。さらに現在は普及価格帯で、配膳に特化した、既存店でもそのまま使えるロボットを複数メーカーが出している。これらが急速に活用が広まった要因になったのではないだろうか。

 配膳ロボットは業態が違えど、運ぶものは主に食品が入った食器だ。焼肉レストランでもファミレスでも作業は大きく違わない。ゆえに、同じロボットでもさまざまな店舗に導入しやすい。

 しかし、調理はそう簡単ではない。調理するものによって大きく作業内容が異なるからだ。部分的な調理自動化は導入事例も多いが、調理を最初から最後まで一気通貫で完了させる事例はまだまだ少ない。同じ外食産業で使われるロボットでも、配膳ロボットと比べると調理ロボットはまだまだ実証実験フェーズの域を出ておらず、普及段階に入ったとはいえない。

作業単位の自動化では意味がない

 こうした現状に対して、TechMagic 代表取締役社長 CEOの白木裕士氏は「調理は作業単位の自動化では効果は限られる。0.5人分の作業を自動化しても投資対効果は出ない。きっちり1人前の仕事ができないと普及しない。当社は飲食業界での人件費削減と生産性向上を目指している。それには、業務の一部分を切り出したモジュール単位の自動化ではなく、全工程をカバーする装置の開発が必要だ」と説明する。

 もう少し補足しよう。50席程度のよくある飲食チェーン店を想定してほしい。厨房スタッフはグリルもフライヤーも盛り付けもと、多種多様な業務を担当する。各業務は独立しており、スタッフのキャパシティは常にギリギリだ。ここで彼らの仕事をどれか1つ自動化しても、全体の省人化効果は出にくい。自動化のはっきりとした投資対効果を生み出すには、「全ての調理工程」を改革する必要があるのだ。

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