ロボットが新たな食体験を創造する、調理全体の自動化目指すTechMagic:羽田卓生のロボットDX最前線(5)(2/3 ページ)
「ロボット×DX」をテーマに、さまざまな領域でのロボットを活用したDXの取り組みを紹介する本連載。第5回は、TechMagicが開発した調理自動化ロボット「P-Robo」を取り上げる。
「スパイスヌードル」でP-Roboの適用範囲の広さ示す
TechMagicは食器仕分けロボットや食材盛付ロボット、揚げ調理ロボットなどを次々と発表している。その1つがプロントコーポレーションと共同開発したP-Roboだ。P-Roboの“P”はパスタのPで、パスタなどの麺料理を完全自動で調理できる。
既にP-Roboは「エビノスパゲッティ 丸ビル店」(東京都千代田区)を含めた3店舗で、パスタの調理を行うために導入されている。一方で、Magic Noodle香味麺房で提供するのは「スパイスヌードル」だ。背景には食材やソースの炒め工程が入るため、P-Roboのパフォーマンスをより良く示すメニュー群としてうってつけだったという事情がある。
白木氏は「炒め物の調理は複雑な作業だ。炒め作業がある麺の調理は難しく、だからこそロボットでやる意味がある。当社の旗艦店として、もっともP-Roboの適応範囲の広さを示すことができ、また、人が再現すると味や調理時間にばらつきが多くなるメニューを選んだ」と説明する。パスタとレシピに共通部分が多いため、機器モジュールを大きく変更せず自動化できるというのもメニュー選定の理由の1つだったようだ。
食材投入から作業確認まで自動化
P-Roboは以下のような調理作業を行う。
(1)麺を茹槽に投入
(2)同時にオーダーに合わせてフライパンにソースなどの具材を投入
(3)ゆで上がった麺をフライパンに投入
(4)フライパンがIHで高速に攪拌(かくはん)、炒めを行う
(5)出来上がりを人に通知する。盛り付けを人の手で行う
(6)フライパンを洗浄する
まとめると食材投入、調理、洗浄、作業確認をP-Roboは担う。これらを1つの装置で行えるというのが非常に重要だ。4つのフライパンを連携させて、具材投入、攪拌/炒め調理、盛り付け作業、洗浄作業という一連の作業を滞りなく進める。この過程で人が介在する機会はない。パスタの盛り付けとソースや具材などの装置への補充だけだ。
「人を超える調理法」を可能に
P-Roboは味の再現性と、調理工程の高速化をどちらも実現している。フライパンの温度、回転数などを毎回一定に保つとともに、ソースの1滴に至るまでシステムで管理する。同じ飲食チェーン店でも、店舗によって味のバラツキがあるとよく言われるが、なるべくどの店でも一定の味を提供できるようにすることはブランド力の観点からも大事だ。徹底した管理はフードロスの発生も防ぐ。
パスタは1食当たり最短75秒、2皿目以降は最短45秒で盛り付け前までの調理を完了できる。正確には2皿目以降はフライパンを同時に複数制御して、高速で動作させるからこそなせる技といえる。フライパンの攪拌は1秒当たり約160回転だというが、これも人間では不可能だ。
ロボットによる調理事例はこれまでにもあるが、調理時間が課題に挙げられることも多い。徹底的に仕組みを考え抜いた結果、1食当たり45秒というパフォーマンスを実現できた。安定した味をこれほど高速で作り続けるのは、人間ではなしえない能力だ。
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