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ロボットが新たな食体験を創造する、調理全体の自動化目指すTechMagic羽田卓生のロボットDX最前線(5)(3/3 ページ)

「ロボット×DX」をテーマに、さまざまな領域でのロボットを活用したDXの取り組みを紹介する本連載。第5回は、TechMagicが開発した調理自動化ロボット「P-Robo」を取り上げる。

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「いまはロボットが前に出過ぎている」

 TechMagicは調理ロボットの開発だけでなく、自動調理システムの川上から川下まで全てを手掛けようとしている。Magic Noodle香味麺房には店舗入り口にセルフオーダーPOSがあるが、これはTechMagicが開発したものだ。P-Roboへのオーダーインプットのプロセスを最適化する上では、オーダーはPOSと連動させた方がいい。客席の回転率を考えれば、1秒でも早くP-Roboを稼働させるべきだからだ。

 白木氏は「(来店客にとっては)食の体験こそが一番大事だ」と語る。これは一見すると、調理の自動化という目標と真逆に映るかもしれない。白木氏はその真意についてこう語る。「ロボットは主役ではなく、黒子に徹するべきだ。あくまで客の食体験を最大化するように、自動化ツールを使うのがいい」(同氏)。


TechMagic社製セルフオーダーPOS[クリックして拡大]

ロボットとの協働で生まれる新たな食体験

 一部報道によるとP-Roboは、一式で約1000万円以上と非常に高価だ。レストラン向けの厨房機器は高くても数百万円程度で、1000万円を超えるものはまずお目にかからない。であれば、P-Roboを導入した店舗は閉店しない限り、P-Roboを中核に据えた運用を行うだろう。

 今後重要になるのが、パスタ以外のメニュー開発だ。白木氏はこれに関するポイントを2つ話す。1つは自由にメニュー開発を行うための、フライパン制御の自由度向上だ。フライパン制御は料理の味に非常に大きく影響する。シェフの技を調理ロボットで再現するには現場での試行錯誤が大事だが、その際に導入ユーザーが簡単にフライパンを制御できるかが重要になる。

 もう1つは、レシピのデジタルコンテンツ化だ。調理ロボットを導入すればメニュー開発をせずとも開業できる。これは飲食店の“究極形”といえるのではないだろうか。「使用に応じてメニュー開発者にインセンティブが支払われる仕組みを作ることも可能だ」と白木氏は言う。調理ロボットさえあれば、デリバリー専門のゴーストレストランをすぐに開業できるようになるかもしれない。


 TechMagicは外食産業に幾つかの新しい方式を持ち込んだと感じる。1つ目はP-Roboを用いた調理工程からの人間の排除。次にメニュー開発など、外食のバリューチェーンでは川上サイドに当たるプロセスの自動化だ。

 白木氏自身が言うように、外食産業では「食の体験こそが一番」であるのは間違いない。自動化が進めばスタッフの時間的余裕が生まれ、来店客とのコミュニケーションに充てられるかもしれない。新たな「食体験」が誕生するきっかけになるのではないだろうか。

 P-Roboは人間がこなせる調理の枠を超えた可能性もある。だがこれを、ロボットが人から仕事を奪う、と考えるべきではないだろう。ロボットだからこそ、提供できる食体験もある。「人vsロボット」の構図ではなく、ロボットと協働することで、さらに人が外食領域で活躍できる領域が発見されると思う。

⇒「羽田卓生のロボットDX最前線」バックナンバーはこちら


著者紹介:

ugo株式会社 取締役COO 羽田卓生(はだたくお)

1998年にソフトバンク入社後、出版事業部に配属。2007年のボーダフォン買収後は、通信ビジネスに主に従事。2013年、あらゆるロボットの制御を担う汎用の基本ソフト(OS)「V-Sido」を開発・販売するアスラテックの立ち上げ時より同社に参画し、現在同社のパートナーロボットエヴァンジェリストとして活動。2019年より、株式会社ABEJAに参画。2020年8月より現職。

任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパン 代表幹事、特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構(RobiZy)アドバイザーほか、執筆活動も行う。



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