ハイパワーと大容量を実現した、“かゆい所に手が届く”Liイオンキャパシター:材料技術
日本特殊陶業は、2026年のリリースを目指して、ハイパワーで大容量のリチウムイオンキャパシターの開発を進めている。
日本特殊陶業は、エネルギーに関連する総合展「スマートエネルギーWeek 春」(2023年3月15〜17日、東京ビッグサイト)内の「第14回 国際二次電池展 春」に出展し、開発中のリチウム(Li)イオンキャパシターを披露している。このLiイオンキャパシターは2026年にリリースされる予定だ。
充電されたまま放置されても自己放電しない
同社は、スパークプラグおよび内熱機関用関連品やニューセラミック、その応用商品の製造と販売を手掛けるメーカー。
今回のLiイオンキャパシターでは、電極に独自の工夫を施すことで、パワー密度を12.5kW/kgとし、容量を1000F(ファラド)として、これまでトレードオフの関係にあったパワーと容量で高いレベルを実現するという。作動温度範囲は−50〜+85℃で高温低温での動作に応じる。こういったスペックにより、搭載するデバイスの小型化と高速充放電を後押しし、過酷な環境での動作を可能にする。
また、サイクル寿命(充放電を繰り返し行える回数)が長く、充電されたまま放置されても自己放電しないため、長期間充電しなくても使えるという。
ブースの担当者は、「用途としては、無人搬送車(AGV)や次世代ドローン、パーソナルモビリティ、自動運転に対応した自動車で補助電源として利用されることを想定している。AGVでは、リチウムイオン電池とLiイオンキャパシターをハイブリッドで備えることで、リチウムイオン電池の充電回数削減と稼働時間の伸長を実現し、リチウムイオン電池の寿命延長と効率的な運用を後押しする」と話す。
続けて、「次世代ドローンでは、出力が低い燃料電池の補助電源としてLiイオンキャパシターを装着することで、離陸時や強風時の姿勢制御とフライトで必要なエネルギーをLiイオンキャパシターでサポートして、安定飛行を後押しする。パーソナルモビリティと自動運転に対応した自動車では、補助電源としてLiイオンキャパシターを活用することで、組み込まれたリチウムイオン電池の電力がなくなった時でも、センサーシステムの稼働を持続し、車両を停止でき、事故を防げる」と語った。
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