ジェイテクトが車載用リチウムイオンキャパシターを開発、85℃まで耐熱性向上:東京モーターショー 2017
ジェイテクトは車載向けに高耐熱のリチウムイオンキャパシターを開発した。電極材料は外部から調達したが、混練や加工といった工程は、社内の専門部署で行った。リチウムイオンキャパシターの動作温度はこれまで60℃が限界だったが、材料の配合の工夫などにより85℃まで耐熱性を高めた。
ジェイテクトは車載向けに高耐熱のリチウムイオンキャパシターを開発した。電極材料は外部から調達したが、混練や加工といった工程は、2017年9月に社内で立ち上げた専門部署で行った。リチウムイオンキャパシターの動作温度はこれまで60℃が限界だったが、材料の配合の工夫などにより85℃まで耐熱性を高めた。これにより、車内でのレイアウトの自由度が高まる。今後、信頼性評価を進めていく。
開発したリチウムイオンキャパシターは、SUVやピックアップトラックのような大型車で、電動パワーステアリング(EPS)のアシストの出力を瞬間的に増やす用途で提案する。既にSUVをベースとした試作車両でアシストへの効果を確認している。
軸力の向上により、SUVやピックアップトラックのような大型車でもEPSを採用することが可能になった。しかし、カーブが続く道路で何度もハンドルを切ったり、駐車時に据え切りを行ったりすると、EPSのアシストの出力が低下する場合がある。急に出力が低下すると運転操作を誤る可能性もあり、対策が必要になっていた。
補機バッテリーの電源電圧を12Vから24Vに増やせば出力に余裕ができるものの、EPS以外の周辺部品も24Vに対応させる必要があり実現が難しい。これに対し、開発品は電圧6VをEPSに一時的に供給し、補機バッテリーと合わせて18Vまで出力を増やせるようにする。18Vであれば周辺部品にも影響がないとしている。展示品は1枚で電圧が3Vのキャパシターを2枚使い、6Vとした。補機バッテリーの電気を使い、数秒で充電が完了する。
耐熱性を向上したことにより、冷却用のファンの配置やキャパシター同士を離すなどの設計上の制約がなくなる。また、リチウムイオンキャパシターは電気二重層コンデンサーと比較して容量が大きいため、同じ容量でも小型化することができる。
EPSの出力補助の他にも、アイドリングストップシステムや、故障など緊急時に数分間のみアシストを継続するバックアップ電源、車載用以外での電源としても広く提案していく。
SUVやピックアップトラックよりも大きな軸力が必要な商用車は、EPSではなく油圧パワーステアリングが引き続き採用される見通しだ。しかし、商用車でもステアリング制御による運転支援機能が求められている。これに向けては、従来の油圧パワーステアリングシステムに乗用車のコラムEPSのようなモーターを追加する形で対応していく。
開発品は「第45回東京モーターショー 2017」(プレスデー:2017年10月25〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日)で展示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ステアリング技術は自動運転車の筋肉と小脳を担う
自動運転車はドライバーの認知、判断、操作を代わりに行わなければならない。知覚はセンサー、判断はコンピュータが担う。その意思決定の通りにクルマを曲がらせるための筋肉と小脳はどう代替するか。 - 世界初の2系統EPS用モーターは、従来よりも3割小型化しながら万が一に備える
デンソーは、「人とくるまのテクノロジー展2016」において、制御回路とモーター巻き線を2系統化した電動パワーステアリング(EPS)用機電一体モーターを出展した。どちらか一方の系統が故障しても操舵のアシストに必要な出力を維持できるようにしながら、従来比で3割の小型化と、2割の軽量化を図っている。 - 電動パワーステアリング世界トップシェアは譲らない、ジェイテクトの戦略とは
電動パワーステアリング(EPS)で世界トップシェアを握るジェイテクト。同社は、EPSの世界トップシェアを維持するため、「上流から下流へ」向かうという事業戦略を展開している。 - 自前のテストコースとISO26262対応が電動パワーステアリング開発に必要な理由
電動パワーステアリング(EPS)で世界トップシェアを握るジェイテクト。「上流から下流へ」向かう同社EPS事業の製品開発戦略を紹介した前編に続き、後編では同社のEPSの開発体制を取り上げる。 - ラック同軸式に取って代わる「ラックパラレルEPS」、10μmの差で差別化図る
レクサスブランドのフラグシップクーペ「LC」。ステアリングには、ジェイテクトが開発した「ラックパラレルEPS(電動パワーステアリング)」が採用されている。2016年12月に生産が立ち上がったばかりだが、2020年にはグローバルシェア17.2%を目標とする注力製品だ。