物性を起点としたモデリングについて考える:1Dモデリングの勘所(17)(1/4 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第17回は「物性を起点としたモデリング」をテーマに、まず物性について種々の視点から考察し、これを受けて物性を起点とした材料力学、熱力学、電気、感性とモデリングの関係について考える。
今回は、物性を起点としたモデリングについて考える。前回説明したように力学を構成する式(モデル)、例えば、熱流と温度差の関係式は、熱コンダクタンスを比例定数として表現される。また、熱コンダクタンスは熱伝達率と基本形状で決まる。このことは、モデリングの起点に熱伝導率などの物質固有の性質(物性)が存在することを意味する。従って、物性を起点にモデリングを考えることは理にかなっている。そこで、まず物性について種々の視点から考察し、これを受けて物性を起点とした材料力学、熱力学、電気、感性とモデリングの関係について考える。
物性はモデリングの起点
図1に物性を起点としたモデリングを示す。ここでは代表的な現象として、熱伝導と剛性を示している。熱伝導率λ[W/m/K]、縦弾性係数(ヤング率)E[Pa]という物性を起点に、基本形状を介して、熱コンダクタンスG[W/K]、剛性S[N/m]といった特性(物体の性質)が定義され、さらに伝熱工学、材料力学の関係式(モデル)が定義される。実際の製品、システムのモデルはこれらの力学モデルの集合体となり、その境界条件、外力などは環境により決まる。図1に示した物性はいわゆる金属などの固体の材料物性であるが、流体力学、熱力学では流体の物性がモデリングの起点になる。
図2に材料物性と力学、加工の関係について示す。すなわち、材料は状況に応じて熱を伝えたり、電気を伝えたりするとともに、加工する際の制約も与える。同じ材料でありながら多くの機能を有しており、各機能に応じた物性を持つ。
物性=物質固有の性質
図3を用いて、物性をもう少し詳しく見てみよう。ここではある材料にさまざまな外乱を加えた際の入力(外乱)と出力(応答)の関係を示す。いずれの場合も歪みという応答(出力)が生じるが、外乱の種類によってこれに関わる材料の性質、すなわち物性は異なってくる。入力が応力場の場合には弾性率、熱の場合には熱膨張率、磁場の場合には磁歪定数、電場の場合には圧電定数という物性が存在する。これらの物性は材料固有のものであり、各物性の間には何ら関係は存在しない。
表1に代表的な材料物性を示す。計測によりある程度正確に定義されている物性から、損失係数、摩耗率、硬度のようにバラツキを含むものまで多種多様である。重要なことは、精度はともかく何らかの形で材料のさまざまな性質を定義し、データベースとして所有していることがモデリングをする際には必須である。
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