世界最高レベルの分解能を実現するシンチレータパネルが2024年に実用化:材料技術
東レは、デジタル検出器システム(DDA)で、世界最高レベルの分解能を実現するシンチレータパネルを開発したと発表した。2024年の実用化を目指し、研究・技術開発を推進している。
東レは2023年3月9日、デジタル検出器システム(DDA)で、世界最高レベルの分解能を実現するシンチレータパネルを開発したと発表した。
開発品を適用したデジタルX線検査技術により、従来困難だったJIS規格「JIS Z3110:2017」の最も厳しい基準を満たし、原子力発電所の配管検査や航空機部品の検査など、高品質が要求される分野の非破壊検査機器に適用できる。2024年の実用化を目指し、研究と技術開発を推進している。
独自技術と組み合わせ高エネルギーX線にも対応
今回は、ネガ型フォトリソグラフィ技術の追求により、厚みを400μmとし、線幅20μmの超厚膜かつ高アスペクト隔壁を備える世界最高分解能のシンチレータパネルを開発した。適用することで、DDAにおいて溶接継手の放射線透過試験方法のJIS規格であるJIS Z3110:2017の最も厳しい基準であるクラスBを達成している。
これにより、従来のDDAが適用できなかったJIS規格検査のデジタル化を実現し、リアルタイムの欠陥検出およびAI(人工知能)による欠陥検出支援など、見落としのない検査システムを実現する。東レ独自の耐X線向上技術と残光制御技術を組み合わせることで、高エネルギーX線対応や長寿命化によるトータルコストの削減、高速検査、動画撮像対応が行える。
現在同社は、高品質が求められる原子力発電所の配管検査や航空機部品の製品検査などへの適用検討を進めている。また、マンモグラフィによる乳がん検診に適用することで、今まで不可能だったレベルの乳がんにおける微小石灰化の早期発見を実現すると見込んでいる。
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