新製品は声やスマホで動かすIH調理器、三菱電機が描くキッチン家電IoTの価値創出:メイドインジャパンの現場力(37)(3/3 ページ)
三菱電機はキッチン家電などのIoT化に対する説明会を三菱電機ホーム機器で開催し、併せて開発中のIHクッキングヒーターや生産ラインを報道陣に公開した。
囲い込みとオープン化と個人情報保護、スマートホームを巡る関係性
家電製品のIoT化が進むことで、製品単体の機能の進化だけでなく、周辺機器との連携によってさまざまな使い方ができるようになっている。
三菱電機ではIoTを活用することで、各個人に合わせる個人適応(価値の行動化)、それらのデータを基にした先読み自動化(価値の感動化)、長期にわたって寄り添う生涯対応支援(価値の愛着化)までのステージの価値創出コンセプトを設定している。
三菱電機 IoT・ライフソリューション新事業推進センター長の朝日宣雄氏は「社会の変化で多様化な価値観が生まれ、少子高齢化により家の在り方も変わってきており、『使うモノ』から『したいコト』を考えることが必要になってきている」と話す。
既に三菱電機では同社製家電製品の操作や、運転状態の確認ができる家電統合アプリケーション「My MU」を開発、冷蔵庫の使用状況の確認や脱衣室の暖房設定、炊飯器の予約などがアプリを通してできるようになっている。2023年にはMy Mu内に、「My MU+」として就寝中にエアコンを自動制御する「おやすみサポート」や、エアコンや冷蔵庫、給湯器の使用状況を通して高齢者を見守る「MeAMOR」などを追加している。
IoT化が進めば異なるメーカーの家電製品でも連携して動かすための共通規格が必要になる。2022年には、アマゾン(Amazon.com)やグーグル(Google)、アップル(Apple)、サムスン電子(Samsung Electronics)、LG電子(LG Electronics)、ハイアール(Haier)、ファーウェイ(Huawei)、イケア(IKEA)などがプロモーター(幹事企業)となっているCSA(Connectivity Standards Alliance)から、スマートホーム機器の規格として「Matter」がリリースされた。
三菱電機は理事会に参加できるプロモーターではなく、仕様の原案やテストに早期にアクセスできるパーティシパントとして参画している。朝日氏は「われわれもCSAに加入し、2022年のMatter発表前から情報は得ている。市場の動向を見ながら、ユーザーが望むのであれば入れていくが、世界でどのように広まっていくかは細かく地域ごとに見ていかなければならない」と慎重な姿勢も見せる。
問題の1つは個人データの扱いだ。詳細なデータを幅広く取得できれば、新たな機能の開発などに生かすことができるが、個人情報の扱いには慎重さも求められる。欧州ではGDPR(一般データ保護規則)を定めて、取得した個人データをEU加盟国にアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインを加えた欧州経済地域(EEA)外へ移転することを原則禁止するなど、個人情報保護への意識は高まっている。
「一般的にデータは個人が特定できないように加工されるが、逆にそれでは個人に適合したアプリケーションは作りづらい。その辺りの折り合いをどうつけていくかが、インターネット活用における課題だ」(朝日氏)
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