ITSコネクトに新展開、自転車と自動車の車車間通信で出合い頭の衝突防止:安全システム(2/2 ページ)
パナソニック サイクルテックとパナソニック システムネットワークス開発研究所はITS(高度道路交通システム)を活用した自転車と自動車の車車間通信の実証実験を行う。京セラやトヨタ自動車、豊田通商も協力する。
日本国内の自転車出荷台数は、少子化などもあって年平均で−3%の減少が続いている。ただ、電動アシスト付き自転車に限定すると、市場は年平均6%のプラス成長が続いており、今後も成長が見込まれる。また、パナソニック サイクルテックのシェアは48%と推定され、電動アシスト付き自転車の市場全体よりも高い成長を続けている。シェアトップのパナソニック サイクルテックがITS対応に乗り出せば、普及への道筋もつけやすいといえる。
ITS Connectの利便性向上に弾みをつけられるか
760MHz帯の専用周波数を使った車車間/路車間通信は、「ITS Connect」として2015年から自動車に搭載され始めた。トヨタ自動車が現在9車種にITS Connectをオプション設定している他、ITS Connectの路車間通信に対応した路側機が、宮城県や茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、広島県、福岡県に設置されている。
自動車では、救急車など緊急車両の接近とその方向を知らせる機能の他、見通しの悪い交差点での出会い頭の注意喚起、車車間通信によるクルーズコントロール、右折時の対向車接近の注意喚起などの機能が提供されている。路車間通信では、右折時の対向車や右折先の横断歩行者の存在を知らせる他、赤信号の待ち時間の目安、信号を無視する可能性がある場合の注意喚起などの機能が実用化されている。
ITS Connect推進協議会が2021年度に実施した調査では、「ITS Connectは安全運転に役立つ」「次のクルマを購入するときにITS Connectをつけたい」という回答が大多数だったものの、ITS Connectを「知らない(調査を受けて初めて聞いた)」という回答が71.3%に上り、知名度に課題が残る。さらに、ITS Connectの搭載で許容できる価格については「5000円以下」「1万円以下」という回答で過半数を占めた(なお、現在トヨタ自動車ではITS Connectが消費税抜き2万5000円のオプション装備)。
自動車が中心だったITS Connectに自転車が加われば、利便性を実感できる場面が増え、普及に寄与しそうだ。自動車、自転車以外に残る交通社会の一員は歩行者だ。京セラは歩行者と自動車が直接通信する「歩車間通信」の検討も継続している。
歩行者と自動車がお互いの位置を知らせる歩車間通信で課題になっているのは、歩行者側の位置情報の精度だ。歩車間通信で歩行者が使用するデバイスとして有力なのはスマートフォンだが、地図アプリなどでも現在位置に多少のずれが生じるのが現状だ。スマートフォンを手に持って画面を見る姿勢であれば位置情報の精度を向上できるが、常にスマートフォンを一定の高さに持って歩くことは現実的ではなく、カバンなどに入れていると位置情報の精度は低下する。
例えば、ランドセルのカバーなどにアンテナを取り付けることができれば、位置情報の受信環境を改善でき、高精度な歩車間通信の実現に近づく。死角や視界の悪い場所からの飛び出しで子どもへの注意が特に必要であることを考えると、歩車間通信のユーザーを絞ることも実用化への近道になるかもしれない。
車車間/路車間/歩車間通信(V2X)で、760MHz帯の専用周波数ではなくモバイルネットワークを使う動きが活発ではあるが、V2Xを普及させ、自動車以外にも参加者を増やすことは使用する通信の周波数帯を問わず共通の課題だといえる。
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