日本橋から宇宙産業を活性化、三井不動産とJAXAが連携し一般社団法人を設立:宇宙開発
三井不動産と国内の宇宙関連有志を中心に設立された一般社団法人のクロスユーが、同団体の設立経緯を説明。2023年4月1日から活動を開始する。
三井不動産と国内の宇宙関連有志を中心に設立された一般社団法人のクロスユーは2023年2月13日、東京都内で会見を開き、同団体の設立の経緯を説明するとともに、同年4月1日から活動を開始することを発表した。同日から募集を開始したクロスユーメンバー(特別会員)となることで、三井物産が東京・日本橋地区に展開する宇宙産業共創拠点「X-NIHONBASHI BASE」のコワーキングスペースなどを利用できる他、JAXA(宇宙航空研究開発機構)をはじめとする宇宙関連の大学/研究開発機関、大企業、スタートアップ、関連団体から形成されるコミュニティーや会員との間での連携が可能になるという。
会見の登壇者。左から、三井不動産 取締役 専務執行役員でクロスユー 専務理事の植田俊氏、三井不動産 代表取締役社長の菰田正信氏、東京大学大学院 工学系研究科 教授でクロスユー 理事長の中須賀真一氏、JAXA 理事長の山川宏氏、クロスユー 事務局長の米津雅史氏[クリックで拡大]
会見の冒頭に登壇した三井不動産 代表取締役社長の菰田正信氏は「宇宙産業は将来大きな成長が期待され、地球上の社会課題の解決にもつながる技術が生まれる重要な意義を持った産業だ。当社も日本橋再生計画で推進している産業創造において注力しており、2018年から宇宙産業に携わる方々専用のビジネス拠点を2カ所整備し、関連イベントを開催するなどしたことにより、この4年間で延べ約4万人が日本橋に集まって活動した。これらの取り組みを加速させるべく設立したクロスユーでは、今後の宇宙産業の成長をけん引する民間企業を中心としたイノベーションに必要不可欠な、オンラインではないリアルの『場』と『機会』を提供し、熱量の高いコミュニティーを構築していきたい」と語る。
宇宙産業を産学官連携で活性化させるオープンプラットフォームを目指す
クロスユーは、宇宙ビジネス企業に加え、地上の課題に取り組む非宇宙企業も含めた多様な業界のプレイヤーがより参画しやすいオープンプラットフォームの形成を目的としている。三井不動産が日本橋再生計画を進める中で、2016年に設立したライフサイエンス領域のオープンイノベーションを促進する一般社団法人LINK-J(ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン)で培ってきた「場」の提供と「機会」の創出によるビジネスマッチングのノウハウに加えて、産官学によるサポート体制を提供することで、多様な業界のプレイヤーの組織を超えた「繋がり、結びつき、発展」を促していく。そして、日本橋から世界の宇宙産業を活性化させるとともに、地球上の課題解決に応用していくことで持続可能な社会の実現を目指す。
クロスユーの運営組織は、3人の理事による理事会と事務局、事業運営にアドバイスを行う運営諮問委員会およびサポーターから構成される。3人の理事は、理事長に東京大学大学院 工学系研究科 教授の中須賀真一氏、専務理事に三井不動産 取締役 専務執行役員の植田俊氏、理事に元内閣府 宇宙開発戦略推進事務局長・経済産業省 製造産業局長の高(正しくははしご高)田修三氏が就任する。運営諮問委員会は三井不動産の菰田氏やJAXA 理事の石井康夫氏、IHI 代表取締役会長の満岡次郎氏など11人、サポーターは宇宙旅客輸送推進協議会 代表理事の稲谷芳文氏や慶應義塾大学 教授の白坂成功氏など15人の参画が現時点で決まっている。
クロスユーの発足に当たり、三井不動産とJAXAは宇宙産業促進の活動に関する連携協定を締結している。また、クロスユーへの加入を内諾している企業として、アクセルスペース、岩谷技研、インターステラテクノロジズ、Space BDなどの宇宙関連スタートアップや、JT、高砂熱学工業、三井住友海上火災保険などの大手企業を含めた18の企業と団体の名前が挙がっている※)。
※)18の企業/団体は以下の通り。アクセルスペース、avatarin、岩谷技研、インターステラテクノロジズ、インフォステラ、宇宙旅客輸送推進協議会、宇宙美容機構、Space cosmetology、ALE、ABLab、JSOL、JT、Space BD、スペースポートジャパン、高砂熱学工業、バスキュール、三井住友海上火災保険、ワープスペース。
クロスユーメンバーの会員種別は、従業員301人以上の企業が対象の特別会員A、従業員300人以下の企業や非営利団体などが特別会員B、個人が特別会員Cとなる。特別会員Aは入会金5万円/年会費25万円、特別会員Bは同2万円/6万円、特別会員Cは同2000円/5000円。なお、2023年3月中旬までの申し込みで入会金と年会費が無料になるとしている。
クロスユーの事業目標は現時点で定めていないが「LINK-Jは7年間の活動で参加企業が650社以上、日本橋へのテナント入居が160社以上、年間のイベント開催数が約800回(2022年)まで拡大しており、これが一つのメルクマールになるだろう。現在の宇宙産業には勢いがあり、年間イベント開催数で1000回のラインまで持っていきたい」(クロスユー 専務理事の植田氏)という。
なお、クロスユーメンバーは、宇宙産業共創拠点であるX-NIHONBASHI BASE(日本橋アイティビルの3/4階)と「X-NIHONBASHI TOWER」(日本橋三井タワーの7階)にあるオフィス区画やコワーキングスペース、会議室、バーラウンジ、スタジオ、イベントスペースなどを利用できる他、三井不動産が日本橋地区に有する三井ホールなどの施設を優先的に利用する権利が得られる。また、2020年から開催しているイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK」などを通じたビジネスマッチングの機会も提供される。「日本橋につながる6本目の街道を宇宙に伸ばすべく、まずはコミュニティーづくりに努めていきたい」(クロスユー 事務局長の米津雅史氏)としている。
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