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「Planet 6.0」に向けた民間主導の月面産業ビジョン、2021年内にロードマップも宇宙開発(1/2 ページ)

月面産業ビジョン協議会は、将来の月面産業で国内企業が勝ち残るための方策として産業界の6つの「決意」と政府への7つの「提言」を中核とする「月面産業ビジョン:Planet 6.0」を策定するとともに、宇宙政策担当の内閣府特命担当大臣である井上信治氏に提出したと発表。2021年内をめどにロードマップを策定する方針だ。

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 月面産業ビジョン協議会は2021年7月13日、東京都内で会見を開き、将来の月面産業で国内企業が勝ち残るための方策として産業界の6つの「決意」と政府への7つの「提言」を中核とする「月面産業ビジョン:Planet 6.0」を策定するとともに、宇宙政策担当の内閣府特命担当大臣である井上信治氏に提出し、正式に受理されたと発表した。今後は、同産業ビジョンに基づき2021年内をめどにロードマップを策定する方針である。

月面産業ビジョン協議会に会見に登壇したメンバー
月面産業ビジョン協議会に会見に登壇したメンバー。左から、パーソルキャリア 執行役員の大浦征也氏、日揮グローバル 常務執行役員の黒須聡氏、ispace 取締役 COOの中村貴裕氏、政策研究大学院大学 学長特別補佐、客員教授の角南篤氏、衆議院議員の大野敬太郎氏、小林鷹之氏、牧島かれん氏、高砂熱学工業 代表取締役社長COOの小島和人氏、電通 執行役員の鈴木禎久氏、日揮グローバル 常務執行役員の花田琢也氏(クリックで拡大)

 同協議会は、30の企業・団体、国会議員、学識経験者が参加する政産学の組織だ。座長は、衆議院議員の河村建夫氏と政策研究大学院大学 学長特別補佐、客員教授で笹川平和財団 理事長の角南篤氏が、座長代理は、衆議院議員の大野敬太郎氏と小林鷹之氏、月面開発ベンチャー・ispace 取締役 COOの中村貴裕氏、三菱総合研究所 ポリシー・コンサルティング部門長 執行役員の小川俊幸氏、座長補佐は、衆議院議員の牧島かれん氏が務める。参加企業・団体としては、ispaceと三菱総合研究所の他、INCJ、IHI、味の素、大林組、GITAI Japan、清水建設、SPACE FOODSHARE、住友商事、ソニーコンピュータサイエンス研究所、高砂熱学工業、千代田化工建設、TBSホールディングス、電通、凸版印刷、日揮グローバル、日清食品、日本政策投資銀行、NEC、パーソルキャリア、三井住友海上火災保険、三井物産、三井不動産、三菱重工業、三菱電機、Moon Village Association、ユーグレナ、横河電機の名前が挙がっており、各社の事業トップや担当者がメンバーとして加わっている。

 会見の冒頭では、政務で欠席した座長の河村氏の代理で大野氏があいさつした。同氏は「ガガーリンが有人宇宙飛行を達成してから60年、スペースシャトルが初めて打ち上げられてから40年が経過した。日本でも、宇宙を産業の対象と捉えるタイミングとなった宇宙基本法の制定から13年になる。この13年間で、宇宙開発は大きく変わり民間主体で進められるようになった。今や世界に宇宙関連ベンチャーは1000社以上がひしめいている。今回発表した月面産業ビジョンの議論では、さまざまな業界から30の企業と団体が参加して、産業としての可能性が出てきた月面についてそのフロンティアを築くべく約3カ月議論してきた。そして、産業界がリスクを取って切り開くべく6つの『決意』を示すとともに、政府に対する7つの『提言』を盛り込んだ内容になっている。極めて画期的な産業ビジョンだ」と語る。

 月面産業ビジョンにおける6つの「決意」と7つの「提言」は以下のようになっている。

産業界の6つの決意

決意1.民間企業が主体となる時代に向けて、産業界の力が求められる/活かせる場所を見出し、自らリスクをとって世界に先駆けて事業展開が可能となるよう技術・能力の向上を図ります。

決意2.月面を技術実証、社会実証の場として活用し、新たな技術、社会システムを創出するとともに、月から地球の既存産業へ還元することで地球上にもイノベーションをもたらします。

決意3.世界に先駆けてビジネスを展開するために必要となるルール・法制度を具体的に挙げ、制定された場合の効果あるいは制定されなかったときのリスクを示します。

決意4.月の開発・利用を行うにあたり産業界が守るべき規範/コード(例:月の環境保護と平和利用を順守すること、地球を越えた視点で持続的な月の開発・利用を行うこと、等)を作成し、普及に努めます。

決意5.民間企業が主体となった時代において、「輸送分野(地球-月、月面)」、「情報・通信分野」、「メディア・コンテンツ分野」、「資源・エネルギー分野」、「建設・インフラ分野」、「食料・バイオ分野」、「金融・保険分野」、「観光分野」など様々な分野において、民間企業あるいは国内外の政府に対し、月面ビジネスを行います。

決意6.国民の月への関心の喚起のためのフラッグシップとして、大阪・関西万博の機会を活かした月ミッション(例:月の水氷のサンプルリターン、地球-月間リアルタイム双方向通信の活用による月面探査ロボット操縦体験・触覚伝送体験、等)を計画・実行します。

政府への7つの提言

提言1.政府は商業的な宇宙利用がもたらすイノベーションの価値を共有し、産業エコシステムの形成に向け、民間サービスの調達を前提とすること。月面および月周回軌道への輸送や探査、インフラ建設等の諸活動をその対象とすること。そのために、アルテミス計画をはじめとする政府の月面活動の計画を見える形に整理し、民間の予見性を高めること。

提言2.政府は月へのアクセスコストを低減するため、官民それぞれが行う月ミッションを活用して、民間が月面商業活動を行うために必要となる物資の輸送機会の供給者となること。政府ミッションについては月輸送ロケットの余剰スペースを活用した民間への相乗り機会を提供すること。民間ミッションについては、民間の提供する月面及び月周回軌道への輸送機会をサービスとして活用すること。

提言3.政府は月面ビジネスへの民間の投資を加速するため、既存の産業政策を適宜活用しつつ、適切な制度の設計を推進すること。サンドボックスによる研究開発やプレイヤー集積の促進、リスクを取って月面ビジネスに挑む企業に対する投資を促進する環境(例:月面ジネス企業への投資のキャピタルゲイン減税、持続可能な月面開発の規範/コードを遵守する企業の非財務情報の活用促進、等)の他、各種施策(例:研究開発減税、基金、特区、関心保有自治体との協力、等)に取り組むこと。

提言4.政府は月面ビジネスに関する民間の事業開発を加速するための環境整備に努めること。月面産業の新たな事業創出や起業家輩出のためのプログラムや場の立ち上げ、人材や知見、技術の流動・移転を促進するプログラム実施、月面データを活用した疑似的環境(デジタルツイン等)のプラットフォーム構築、科学コミュニティとの産学連携による月面探査事業の設計等に取り組むと共に、これらを次世代人材の育成や高等教育に繋げていくこと。

提言5.政府は日本の民間企業が競争優位となれるよう、宇宙資源法に関する府省令やその他必要となる制度・指針・基準等を速やかに整備するとともに、国際社会と協調・連携して国際的な商業活動を担保するルールの整備(例:通信帯域、建設基準、生物持ち込み、セーフティーゾーン、等)を働きかけること。これらの活動を通じて、月面ビジネス支援に積極的な国として認知度を高めることで海外企業の集積を行い、海外への情報流出に留意しつつ世界最先端の情報が集まる拠点となることを目指すこと。

提言6.政府は国民の月への関心の喚起のためのフラッグシップとして、大阪・関西万博の機会を活かした月ミッション(例:月の水氷のサンプルリターン、地球-月間のリアルタイム双方向通信の活用による月面探査ロボット操縦体験・触覚伝送体験、等)を民間と協力して実現すること。

提言7.これらの月面産業の育成を加速する施策が国際社会をリードするための政策上のメリットになり、地球上の課題解決にもつながるという事実を官民で共有すること(例:SDGsへの貢献、循環型社会の構築、等)。また、経済安全保障の観点から、月面ビジネスを行う各企業の保有する技術の戦略的不可欠性に留意すること。

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