「Planet 6.0」に向けた民間主導の月面産業ビジョン、2021年内にロードマップも:宇宙開発(2/2 ページ)
月面産業ビジョン協議会は、将来の月面産業で国内企業が勝ち残るための方策として産業界の6つの「決意」と政府への7つの「提言」を中核とする「月面産業ビジョン:Planet 6.0」を策定するとともに、宇宙政策担当の内閣府特命担当大臣である井上信治氏に提出したと発表。2021年内をめどにロードマップを策定する方針だ。
「月面から地球への価値還元が重要だ」
今回策定した月面産業ビジョンは、国内の産業界が主体となって月面空間での新産業を形成し、価値還元によって地球上のイノベーションを創出する決意を示すととともに、政府に対してこの未来の実現のためにともに歩むことを求める内容になっている。
現在の月面開発は、米国のアルテミス計画や中国の嫦娥計画など国家が主体となっているが、既に国内外の先駆的な企業は月面で行う技術実証や関連するサービス提供などの事業展開を始めている。国内で先駆的活動をする企業としては、建設、自動車、食品、保険、玩具などさまざまな業種があり、月面の探査や利用に関心を有する企業も100を超える状況にある。そして、宇宙開発の主体がそれらの民間企業になる時代を、Society 5.0に続いて、地球と他天体を含む宇宙が一体となった循環型の社会経済を構築することを目指す「Planet 6.0」と規定。このPlanet 6.0時代に向け、世界的に競争力のある産業基盤を形成し、将来の月面産業で国内企業が勝ち残るための方策として月面産業ビジョンが策定された。
座長代理を務めるispaceの中村氏は「月面の開発は、2030年までの各国政府が主体の活動を経て、月面における1000人規模の有人滞在が本格化する2030年以降は民間企業による産業化が主体になっていくだろう。中でも、地球と月の間の物資輸送は民間需要が5割を占めるようになるという予測もある。そして、月面の産業化が進む中で重視すべきなのは、地球への価値還元ではないか。地球温暖化対策や水素を中心とする新しいエネルギーインフラのシステム実証、災害などに備えた人類のデータ・知見や文化財の保管、地球環境に負荷をかけない計算処理などさまざまなことが考えられる」と述べている。
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