ISTの次世代ロケットは「DECA」、1段目ロケット再使用で打上コストを10分の1に:宇宙開発(1/4 ページ)
インターステラテクノロジズ(IST)が、同社の事業戦略を説明するとともに、小型衛星を一体運用するコンステレーション用大型ロケット「DECA」の計画に着手したことを発表した。
インターステラテクノロジズ(以下、IST)は2023年1月24日、東京都内とオンラインで会見を開き、同社の事業戦略を説明するとともに、小型衛星を一体運用するコンステレーション用大型ロケット「DECA」の計画に着手したことを発表した。既に3回の宇宙到達実績を持つ観測ロケット「MOMO」、初号機打ち上げを目指して開発を進めている超小型衛星用ロケット「ZERO」に次ぐロケットで、国内で運用されている大型ロケット(「H-IIA」とみられる)と同等の輸送能力を持ち、1段目ロケットの再使用などによって削減した安価なコストを特徴として、2030年代の打ち上げを目指す。
DECAは、国際単位系で10の1乗=10倍を表す接頭語であり、現在開発中のZERO(0)からDECA(10)へ桁が上がるほどの進化を目指して名付けられた。また、ISTが拠点とする北海道十勝地方の「十」、周回軌道をイメージする0に深宇宙輸送も可能な1を加えて10、2023年がISTの事業開始から10年の節目、そしてシンプルに「デカい」などの意図も込められている。
DECAの最大の特徴は2段ロケットのうちの1段目を再使用することだ。IST 代表取締役社長の稲川貴大氏は「再使用すれば必ずコストが安くなるとは限らない。ZEROのような小型ロケットでは使い切りと比べてコスト増になってしまう。大型になって初めて再使用の効果が出てくるが、それでもあまり安くならないのが現状だ。そこで、DECAでは、MOMOやZEROで技術を磨いている部品の低コスト化や量産化の技術をベースに、これに再使用の技術を組み合わせることで、既存の国内大型ロケットの10分の1の打ち上げコストを目指す」と意気込む。
直近1年間で事業規模を大きく拡大
ISTは、MOMOの2回目と3回目の打ち上げを2021年7月に連続して成功させた後、現在は2024年度内のZEROの初号機打ち上げに向けた開発を進めているところだ。難易度の高いZEROの開発は、2019年3月に設立されたサポーター組織「みんなのロケットパートナーズ」が支援している。この他、100%子会社として人工衛星事業への参入を目的とするOur starsを2021年12月に設立するなど、グループとして事業拡大も図っている。
これらに併せてISTの活動の規模も大きくなっている。2022年1月〜2023年1月の1年間で、ISTの従業員数は51人から109人、みんなのロケットパートナーズの参加企業/団体数は30から36に増えている。2022年末に完了したシリーズDラウンドで38億円の資金を調達し、この他、経済産業省などの補助金で8.9億円、ふるさと納税の寄付金で6.4億円、不動産クラウドファンディングで7.2億円の資金を得ている。
IST 代表取締役社長の稲川貴大氏は「独立系のベンチャー企業としてロケットを作っていく上ではさまざまな協力が必要であり、だからこそ『開かれた宇宙開発』『みんなのロケット』というコンセプトを重視している。連携パートナーも、創業当初からの北海道大樹町に加え、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とのロケットエンジンの共創を進めており、ZEROの心臓部となるターボポンプの開発で室蘭工業大学や荏原製作所の協力を得ている」と語る。
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