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宇宙ごみ除去のアストロスケールが創業10周年「次の10年で宇宙を持続可能に」宇宙開発(1/3 ページ)

アストロスケールが宇宙の持続可能な利用に向けたスペースデブリ除去をはじめとする同社の事業について説明。2023年で創業10周年を迎える同社は、JAXAや衛星通信サービスを提供するOneWebなどとの契約を締結するなど着実に事業を拡大している。

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アストロスケールホールディングスの岡田光信氏
アストロスケールホールディングスの岡田光信氏

 アストロスケールホールディングスは2023年1月12日、東京都内で会見を開き、宇宙の持続可能な利用に向けたスペースデブリ除去をはじめとする同社の事業について説明した。2013年5月の創業から2023年で創業10周年を迎える同社は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や衛星通信サービスを提供するOneWebなどとの契約を締結するなど着実に事業を拡大している。アストロスケールホールディングス 創業者 兼 CEOの岡田光信氏は「資本金2000円、従業員は私1人で始まった当社だが、この10年間でスペースデブリ対策が強く求められるようになっている。創業10周年を迎えて、次の10年間の活動が宇宙を持続可能にするためにも重要になる」と語る。

 実際に、衛星データ利用が活発化する中でスペースデブリは増え続けている。特に2020年以降は、衛星通信などで数十〜数千機の小型衛星を一体的に用いる「コンステレーション」という運用形態が広がるとともに、民間企業や宇宙参加国も増加しているため、地球の衛星軌道を中心とする宇宙環境は急速に悪化している。岡田氏は「今や大きさ10cm以上のスペースデブリは4万個近くあり、これらと運用中の衛星のニアミスが急増している。宇宙空間では極めて近いといえる1km圏内でのニアミスは、2020年時点では月間2000回程度だったが、その1年後の2021年には3倍の月間6000回になった。これはもはや閾値を超えた状態と言っていいだろう」と強調する。この他にも、2021年、2022年には宇宙機における破砕、衝突回避の事例が多数報告されるようになっている。

宇宙デブリの数人工衛星と他物体のニアミス 宇宙デブリの数(左)、人工衛星と他物体のニアミス(右)とも、ここ数年で急激に増加している[クリックで拡大] 出所:アストロスケールホールディングス

 なぜこのようなことになっているかと言えば、宇宙業界が基本的に使い捨て文化であることが原因になる。「地球上では当たり前のリユース、リサイクル、リペア、リフューエル、リムーブといった“re”が付くものが全くない。これらを宇宙で実現するのが、当社の考える『軌道上サービス』だ」(岡田氏)。

アストロスケールの考える「軌道上サービス」の位置付け
アストロスケールの考える「軌道上サービス」の位置付け[クリックで拡大] 出所:アストロスケールホールディングス

 しかし、創業当時のアストロスケールの事業には否定的な意見が多かった。岡田氏は「『市場なんてない』と言われたこともあったが、逆にこれは良いことだと捉えた。創業前にいたIT業界は確かに市場が存在し激しいパイの奪い合いになっていたが、それと比べたら軌道上サービスはなんてブルーオーシャンなんだ、と思えた」と述べる。

衛星打ち上げ失敗をばねに事業規模を順調に拡大

 創業時点でさまざまな課題があったアストロスケールだが、「技術」と「事業」、そして存在しない市場を規定するための「ルール作り」の3つに取り組むとともに、これらを実現するための「チーム形成」と「資金調達」を進めてきた。軌道上サービスという宇宙業界にまだない事業を開拓するため、日本、シンガポール、米国、英国、イスラエルの5カ国6拠点をグローバル展開しており、従業員数は約390人まで増えている。調達した資金は合計334億円に達する。

グローバル展開を進めるアストロスケール
グローバル展開を進めるアストロスケール[クリックで拡大] 出所:アストロスケールホールディングス

 岡田氏は創業時のエピソードとして、自社での技術開発や生産を決めた経緯について取り上げた。「当初はファブレスでもいいと考えていたが、創業3日後にSpaceXを見学する機会があり、全てをインハウスでやらなければダメだと確信できた」(同氏)。また、同社が初めて開発したスペースデブリ観測衛星「IDEA OSG1」の打ち上げ失敗は大きな痛手となったものの、その後も資金調達が増えて人材獲得も進み、事業規模も順調に拡大している。

アストロスケールの沿革
アストロスケールの沿革。大きな痛手だった「IDEA OSG1」の打ち上げ失敗を乗り越えた[クリックで拡大] 出所:アストロスケールホールディングス

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