卵殻含有のPSとABSを開発、独自の加工で従来品と同等の強度を実現：新機能材料展2023

デンカは、天然素材含有プラスチックとして、樹脂に卵殻粉を分散混錬した「卵殻含有PS」や「卵殻含有ABS」の開発を進めている。

[遠藤和宏，MONOist]

　デンカは、「コンバーティングテクノロジー総合展2023」（2023年2月1〜3日、東京ビッグサイト）内の「新機能材料展2023」に出展し、天然素材含有プラスチックとして新たに開発した「卵殻含有PS（ポリスチレン）」と開発中の「卵殻含有ABS（アクリロニトリル／ブタジエン／スチレン）樹脂」を披露した。

卵殻含有ABSは表面加工性や塗装性、印刷性に優れる

　卵殻含有PSは、PSに卵殻粉を分散混錬した複合材で、卵殻を含有しており地球環境に優しい素材で、汎用の化石原料由来樹脂と同等の加熱溶融成形性を備え、各種形状（シートやケースなど）に成型できる。

「卵殻含有PS」のシート［クリックで拡大］

「卵殻含有PS」の射出成型サンプル［クリックで拡大］

　デンカのブース担当者は、「一般的に、卵殻粉を分散混錬した樹脂は、強度が低下するが、当社の卵殻含有PSと卵殻含有ABSは特殊な加工を施すことで、通常のPSやABSと同等の強度を実現している」と話す。なお、樹脂に混錬する素材に卵殻粉を選んだ理由の1つとしては、国内の割卵工場などから排出される卵殻が年間約26万t（トン）に達し、毎年一定の量が確保できる点を挙げている。

「卵殻含有PS」の物性［クリックで拡大］ 出所：デンカ

左から「卵殻含有PS」の溶融粘度、各温度でのMFR（メルトマスフローレイト、熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を表す数値）［クリックで拡大］ 出所：デンカ

　既に、プラスチックの使用量と温室効果ガスの削減に貢献する製品として、「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデル「ガンプラ」で採用されている。

「卵殻PS」が採用された「ガンプラ」［クリックで拡大］

　卵殻含有ABSは、ABS樹脂に卵殻粉を分散混錬した複合材で、卵殻含有PSと同様に、汎用の化石原料由来樹脂と同等の加熱溶融成形性を備え、各種形状（シートやケースなど）に成型できる。ABS樹脂と同じく表面加工性や塗装性、印刷性に優れる。いずれも、用途としては、食品包装などの容器や産業／家電部品、日用雑貨品、住宅資材、玩具／プラモデルを想定しているという。

「卵殻含有ABS」の物性［クリックで拡大］ 出所：デンカ

「卵殻含有ABS」のサンプル［クリックで拡大］

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