PFN子会社が家庭用ロボットを開発、家具の自律移動で住空間はより直感的に:ロボット開発ニュース(2/2 ページ)
Preferred Networks(PFN)の子会社で自律移動ロボットを手掛けるPreferred Roboticsは、人の指示通りに動く家具「スマートファニチャー」を目指して開発した家庭用自律移動ロボット「カチャカ」を発表した。
自律移動や障害物回避、音声認識などの機能はエッジデバイス上で動作
カチャカの外形寸法は、幅240×奥行き387×高さ124mmで、重量は10kg。最高移動速度は毎秒400mmとなっている。専用家具のカチャカシェルフは、モジュール式になっており、3段を2段にするなどパーツの付け外しが可能。カチャカシェルフ3段の外形寸法は幅488×奥行き328×高さ717mm、重量は8.8kg。カバーパネルを装着することもできる。
カチャカは、基本的に段差のないバリアフリー環境での利用が前提になっているが、それでもフローリングやじゅうたんなど床面の素材から家屋内の状況まで、さまざまに環境が異なる居住空間内で、専用家具とドッキングして自律移動できるように5つの技術を搭載している。「5000万世帯あれば5000万種の環境があり、それら全てに対応することを目指した」(磯部氏)。
1つ目は、独自開発したグラフベースSLAM(simultaneous localization and mapping)技術による、多様で変化の大きい居住空間内での自己位置推定とマッピングである。画像認識のための情報を取得するフロントカメラ、周囲の障害物との距離を検知するLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、ドッキングする専用家具や居住空間内にある人/物との距離を検知する3Dセンサーを搭載しており、これらのセンサー情報と車輪から取得した情報を用いて自己位置を推定して地図を作成し、専用家具を正確な位置に運ぶ。
2つ目は、床面にある障害物の回避機能やさまざまなセンサー情報を統合し、目的地までの最適なルートを導き出すナビゲーション技術である。親会社のPFNが得意とする深層学習技術を活用してピクセル単位で障害物を特定することにより、床面の障害物にぶつからずスムーズに移動できる。3つ目の画像認識による物体検出でも、深層学習技術を活用しており、フロントカメラとバックカメラで取得した画像から人や家具を区別し、リアルタイムに検出する。
4つ目は、カチャカのメイン操作インタフェースとなることを想定している音声認識機能だ。カチャカ本体に4つのマイクを搭載しており、居住環境で発生するさまざまなノイズの中でも音声コマンドを聞き分けられるよう、独自の機械学習モデルをPFNのハイパーパラメーター自動最適化フレームワーク「Optuna」で最適化し、軽量かつ高精度な音声認識を実現したという。
5つ目の技術は、最大積載荷重20kgに対応するとともに、カチャカ本体が専用家具の下に潜り込んでスムーズに連結/運搬するためのドッキングユニットだ。家具認識センサーを組み込むことで正確なドッキング位置が検出できるようになっている。
なお、これら5つの技術の関わる深層学習技術に基づくAI(人工知能)モデルは、エッジデバイスであるカチャカ本体で動作するようになっており、クラウドとの連携は前提になっていない。カチャカサブスクリプションによって行うクラウドとの通信は、ソフトウェアアップデートなどで利用されるのみだ。「住空間というプライバシーを守るセキュリティの観点と、自律移動や障害物回避などに影響するレイテンシ(遅延時間)をできるだけ短くするという観点からエッジデバイス上で動作するようになっている。この場合、消費電力が課題になるが、PFNのスーパーコンピュータ『MNシリーズ』などを活用した最適化によってできるだけの軽量化を図ることで対応している」(西川氏)という。
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