トヨタが人工知能ベンチャーに出資、「ぶつからない」ことを学ぶ技術を披露:自動運転技術
トヨタ自動車が人工知能技術ベンチャーのPreferred Networks(PFN)との提携を発表した。トヨタ自動車は「2016 International CES」で、PFNの技術を自動車に応用する可能性のコンセプトの1つとして、「ぶつからない」ことを学習する「分散機械学習のデモンストレーション」を披露する。
トヨタ自動車と人工知能技術ベンチャーのPreferred Networks(PFN)は2015年12月17日、主にモビリティ事業分野における人工知能(AI)技術の共同研究/開発で提携することで合意したと発表した。トヨタ自動車は、米国ネバダ州ラスベガスで開催される消費者向けエレクトロニクス展示会「2016 International CES」(2016年1月6〜9日)において、PFNの技術を自動車に応用する可能性のコンセプトの1つとして、「ぶつからない」ことを学習する「分散機械学習のデモンストレーション」を披露する。
今回の合意を受けてトヨタ自動車はPFNへの10億円の出資を決めた。出資は、2015年12月30日付けでPFNが第三者割当増資によって発行する株式をトヨタ自動車が引き受ける形で行われる。
トヨタ自動車は、自動運転をはじめとした、次世代のモビリティ社会の実現に向けた技術の研究開発に取り組んでいる。重点領域は以下の3つだ。
- 運転知能(Driving Intelligence)
- つながる(Connected Intelligence)
- 人とクルマの協調(Interactive Intelligence)
これらの領域で、PFNが強みとする、機械学習やディープラーニングをはじめとしたAI分野での独自の高い技術力を生かせると判断した。また、次世代のモビリティ社会の実現のみならず、「誰もが安心して安全・自由に暮らすことができる社会の実現を目指した新たな技術/商品/サービスの企画/開発を進めたい」(トヨタ自動車)としている。
PFNは、自然言語処理技術、機械学習技術分野で世界トップレベルの技術力を有するベンチャー企業だ。既に、工作機械や産業用ロボットの高度なインテリジェント化を目的にファナックと、自動車分野への応用やデジタルAV機器の高度化などを目的にパナソニックと提携している。
PFNと提携したトヨタ自動車は、2015年に入ってからAI技術の研究開発に注力する姿勢を示している。2015年9月にマサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学とAI技術に関する研究連携で合意。同年11月には米国のシリコンバレーにAI技術の研究開発拠点となる新会社TOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)の設立を発表した。このTRIのCEOには、災害救助ロボット競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」のプログラムマネジャーを務めたギル・プラット氏が就任している。
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